クロキ白い糸をインディゴ染料につけると、最初は黄緑色に、空気に触れると美しい藍色に変わる。これは水の透明度が高く、緑豊かな備中地域だからこそ出せる色だ。この糸から、デニム生地を織り上げる(撮影/藤岡みきこ)
クロキ
白い糸をインディゴ染料につけると、最初は黄緑色に、空気に触れると美しい藍色に変わる。これは水の透明度が高く、緑豊かな備中地域だからこそ出せる色だ。この糸から、デニム生地を織り上げる(撮影/藤岡みきこ)
クロキのデニム生地は、使った材料によって一枚一枚風合いが異なる(撮影/藤岡みきこ)
クロキのデニム生地は、使った材料によって一枚一枚風合いが異なる(撮影/藤岡みきこ)

 日本のとある工場が、海外のラグジュアリーブランドから絶大な支持を得ている。それがあるのは、岡山県は井原市だ。

 江戸時代中期からの綿花生産地であり、藍染織物がさかんに作られていた岡山県井原市。この街に、世界の市場が熱い視線を注ぐデニム生地のファクトリーがある。それがクロキ。

 新興国の台頭で、日本の繊維産業は熾烈(しれつ)なコスト競争に巻き込まれている。この10~20年で、国内では数多くのファクトリーが姿を消した。そんな中でも、クロキは顧客の心をつかんで離さない。

 顧客には、誰もがその名前を知るラグジュアリーブランドがいくつもある。イタリアの高級紳士服ブランド「エルメネジルド ゼニア」もその一つだ。

 ゼニアはこの秋冬から、「日本製」にこだわった限定ラインを発表した。名付けて「メイドイン ジャパン カプセルコレクション」。セットアップのスーツからシャツ、デニムまでがラインアップされたコレクションの生産の一翼を、クロキが担う。

 主戦場は、2万円でも3万円でも売れる「プレミアムデニム」の領域だ。社長の黒木立志さん(63)はこう話す。

「顧客が求めるレベルは高いですよ。納期、品質に加えて、こちらの提案力も試される。でも、何度も試作を繰り返し、要求に応えてきたことが技術力につながってきた。安価な大量生産のゾーンではなく、山のてっぺんを狙ってきました」

 生産量、売り上げともに、海外向けが7割にのぼるという。

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