CFP1級ファイナンシャルプランニング技能士黒田尚子さん2009年、乳がん(ステージIIa)が見つかり、右乳房全摘出手術、ホルモン治療を受けた。11年、乳がん体験者コーディネーター資格取得。聖路加国際病院のがん患者向け「おさいふリング」のファシリテーターを務める(写真:本人提供)
CFP1級ファイナンシャルプランニング技能士
黒田尚子
さん
2009年、乳がん(ステージIIa)が見つかり、右乳房全摘出手術、ホルモン治療を受けた。11年、乳がん体験者コーディネーター資格取得。聖路加国際病院のがん患者向け「おさいふリング」のファシリテーターを務める(写真:本人提供)

 通院による抗がん剤治療、高額の先進医療など、がん治療は変わりつつある。患者になってもあわてないよう、今のうちから考えておきたい。

 ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、2009年に乳がんを経験した。以来、黒田さんのもとには、がんの医療費が不安で相談に訪れる人が少なくないという。

 だが、結論からいうと医療費自体はさほど心配することはない。アメリカンファミリー生命保険の調査(11年)によると、がん経験者が治療全般にかかった費用(入院、食事、交通費等の総額)は50万円程度(36.3%)が最多。次が100万円程度(29.5%)だった。

「がんの部位やステージ、療養環境などによって変わりますが、だいたい100万円程度あれば賄えると思っていいでしょう」

 日本人に多い大腸(結腸)がんを例に、かかる費用の総額を黒田さんに試算してもらった。検査と手術、術後化学療法(抗がん剤)の医療費に、交通費なども加わり121万円。これくらいなら、預金で間に合う人も多いのではないか。

「実際にがんになった患者さんからは、医療費は何とかなったという声をよく聞きます。ただ、働けなくなった場合の生活費には、多くの方が困っています」

 今や働きながらがんを治す時代とはいえ、がんになった勤労者の34%は依願退職や解雇に追い込まれている。前出のがん患者アンケートの第4回調査によると、がん診断後の収入は減少傾向。収入減をいかに補うかが、がんへの備えの要となる。

「子どもがいれば当然、養育費がかかりますし、ある程度の年齢になれば高齢の親を扶養している人もいます。自分が働けないことで、どの程度の影響があるかを考えておきましょう」

 会社員なら、病欠4日目から1年半までの間、傷病手当金として平均日給の約3分の2が給付される。健保組合によってはさらに上乗せ給付を用意している。回復の見込みがなければ障害年金の対象になることもある。

AERA  2015年9月7日号より抜粋