あるいは、「G線上のアリア」をバックに繰り広げられたアクションシーンは、ミュージックビデオ的でもあり、のちに多数の模倣表現を生み出した。

 ロボットデザインにも触れておくべきだろう。それまでの角型とはまるで違う、背でヌメッとしたフォルムは独創的だった。美少女の存在は言うまでもない。かくしてエヴァは、

「1970年代の宇宙戦艦ヤマト、80年代の機動戦士ガンダムの後を継ぐ作品になった。世代を超えて、大人からも支持されたんです」(石岡さん)

 大人の支持を集めた理由は、もう一つある。石岡さんによればこうだ。

「エヴァや使徒を描くときのアングルは、特撮のそれです」

 円谷英二をはじめ、特撮への造詣が深い庵野のこだわりが、炸裂した。円谷といえば、戦時中に不本意ながらも、軍のプロパガンダ映画を撮った過去を持つ。そう、戦後のある時期まで、日本の特撮映画には戦争の記憶が刻まれていただろう。

 その記憶は、エヴァにも見てとれる。旧劇場版で、戦略自衛隊がNERV本部を襲撃するシーンがある。石岡さんによれば、岡本喜八監督の戦争映画「激動の昭和史 沖縄決戦」(71年)からの引用だという。NERV職員に向け、無慈悲に噴射される炎。それは、アメリカ兵が放つそれと同じ構図を持っていた。

AERA  2015年8月31日号より抜粋