軒先西浦明子社長(46)[東京都目黒区]にしうら・あきこ/商店街の飲食店前のスペースを借りて営業する八百屋さんと(右)。「本店」は住宅街にあり、人通りが多い場所にも出店したかったという。軒先の仲介で希望がかなった(撮影/高井正彦)
軒先
西浦明子
社長(46)
[東京都目黒区]
にしうら・あきこ/商店街の飲食店前のスペースを借りて営業する八百屋さんと(右)。「本店」は住宅街にあり、人通りが多い場所にも出店したかったという。軒先の仲介で希望がかなった(撮影/高井正彦)

 ネットやスマホの浸透で、人と人が簡単につながれるようになった。柔軟な発想ができれば、「商機」も無限に広がっていく。

 西浦明子社長(46)が取り組んだのは、店先のちょっとしたスペースや駐車場の空き区画といった有効活用されていない空間を「見える化」するという試み。

 車、住宅、オフィス。みんなで共有して安くすませようという「シェアエコノミー」が広がるなか、その名も「軒先」という会社をつくり、「貸したい」「借りたい」というニーズを掘り起こした。自社サイト上でマッチングして仲介料を得る。

 立地や貸主の意向により賃料はまちまちだが、一日数千円ほどという例が目立つ。全国で4千カ所以上の物件が登録され、弁当やクレープなどの軽食の移動販売、携帯電話の販促といった各種イベントに使われている。駐車スペースに限れば、コンサートや野球の試合の開催時に会場近くで借りる個人の利用が多いという。

 西浦さんにとっては思いがけない形での起業だった。上智大学でポルトガル語を専攻し、ソニーに就職してチリの現地法人でマーケティングなどを経験。

 東京都内のIT企業などでの勤務も経験し、結婚と妊娠を機に2007年、仕事を辞めた。だが、出産前に時間を持て余し、チリで気に入った真鍮(しんちゅう)製の食器を輸入してネットで販売する、というアイデアが浮かんだ。

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