「サービス業の現場はどこも忙しい。店長やマネジャーが売り場でアルバイトの働きぶりを細かく見たり、こまめに声をかけたりするのは至難の業です。私にはできませんでした」

 思いついたのが、職場のコミュニケーションを「見える化」する、冒頭のカードだった。 今西さんは埼玉大学工学部を卒業後、日立製作所に営業職として4年ほど勤務。何となく起業という選択肢を考え始め、「小さな職場でもマネジメントを経験したい」と、ユニクロを展開するファーストリテイリングに転職した。新事業のヒントを得て12年3月に退職。起業準備のため早稲田大学大学院の商学研究科に入り、そこで知り合った仲間と13年3月にwizpraを設立した。

 ビジネスが回り始めると、「社内だけでなく、顧客とのコミュニケーションも見える化してほしい」という要望が強かった。さっそく14年8月、新サービス「ウィズプラNPS」を始めた。

 居酒屋なら「味」「価格」「メニュー」や、店員の顔写真入りのリストを示して接客の質も尋ね、客にスマホなどで点数を入力してもらう。年齢や性別、来店回数といった客層別に回答内容が自動分析され、店側は結果をサービス改善につなげる。主に米国で広まりつつある新しい分析手法を採り入れ、改善点や客に評価されている点が的確に分かるのがミソだ。スポーツクラブやホテル、カラオケチェーンなど70社ほどが利用している。

「社内外のコミュニケーションの見える化が進めば、企業はサービスの質を上げることができ、客が増えてもうかった企業はさらなるサービス向上のために投資できる。こんな好循環につなげられればいいですね」

AERA 2015年8月17日号より抜粋