子育て世代は学校が近い、通勤が便利など立地を重要視しますが、リタイア世代は郊外に1千万円程度の家をキャッシュで買いたいという層も多い。また、ローンを組むのが難しいシングルマザーが、実家に近い郊外立地の物件をキャッシュで買うこともあります。買い手とマッチングさえできれば、空き家も資産になります」

 だが一方で、所有者が手を尽くしても売れない、貸せない空き家もある。それでも、持っているだけで固定資産税は徴収されていく。

 こうしたジレンマを解消するには、抜本的に構造を転換させるしかない。住宅資産研究所所長の倉田剛さんは、「リバースモーゲージ」という制度を使った空き家対策を提唱する。

 リバースモーゲージとは、高齢者が居住している家を担保に融資を受け、死後に担保不動産を処分することで、融資額を一括返済する制度のこと。公的制度と民間商品がある。公的制度では、「終身在宅」が条件で、利用者が老人ホームなどに転居した場合は融資がストップされてしまう。この制度設計を変更すべきだ、というのが倉田さんの主張だ。

「担保物件が空き家になったら、固定資産税など税金の延納を可能にして、死後に空き家を処分することで、一括納付できるようにする。そうすれば、収入がない高齢者の負担も軽くなり、没後は子どもにもいくらかのお金が残るかもしれない。『負の不動産』を継ぐ必要もなくなります」

 つまり、高齢の親は、自宅を担保に融資を受けて生活資金に充てる。親が亡くなったら、融資元が空き家(実家)を売却することで償却する。子どもに家は残らないが、空き家も残らないというわけだ。物件が融資対象になるかなど課題はあるが、対策のひとつではあろう。

AERA 2015年8月17日号より抜粋