歴史を変えたきょうだいといえば?
歴史を変えたきょうだいといえば?

 日本の歴史上、さまざまなきょうだいがドラマを繰り広げてきた。龍馬と乙女、頼朝と義経……。歴史をつくった「きょうだい」の姿とは。

 日本の歴史はすなわち、きょうだいの歴史である。「時代劇研究家」を名乗るコラムニストのペリー荻野女史が、歴史を変えたきょうだいをピックアップした。

 ペリーさんいわく“最も執念深い”源頼朝・義経の兄弟げんか。これがなければ、鎌倉幕府の礎は築かれなかったし、薩長同盟や大政奉還に道を開いた坂本龍馬の活躍は、姉・乙女の支えあってこそ。そう、きょうだいの骨肉の争いや無二の絆が、我が国の歴史を変えてきたのだ。

 中でもペリーさんが注目するのは、真田信之・幸村兄弟だ。

「弟が困ったとき、必ず兄が助け出しているんです。心の底から、お互いを尊敬し合っていたんだと思います」

 時は戦国、天下分け目の関ケ原の戦で2人は敵同士になっている。しかしこれはお互いを憎み合っていたからではなく、兄は徳川、弟は豊臣家に近い家系から、それぞれ嫁をもらっていたため。実はこの結婚、周囲を強い武将に囲まれ、誰につくべきか、常々頭を悩ませていた父・昌幸が“リスクヘッジ”として決めたという一説もある。

 一夫多妻制、お世継ぎ争いのために様々な策略がめぐらされた時代。きょうだいの関係は、今よりもっと複雑だっただろう。そして父と弟は豊臣、兄は徳川につき、一家離散状態に……。

 結果はご存じの通り、徳川方の勝利。兄は、敗将となった弟の命を救うため、我が身も顧みず必死の嘆願を行ったのだ。なんて素晴らしき兄弟愛! 戦国武将の中でも頭脳派として大の人気者で、来年の大河ドラマの主役、弟・幸村に対して知名度が低い兄だが、実は弟思いで、こんな熱いハートの持ち主なのだ。「真田丸」の伝説も、兄なしでは生まれなかった。

AERA 2015年8月17日号より抜粋