屋根が朽ち、倒壊の危険性が高いとして、京都市が住所を公表した空き家。所有者が名乗り出て対策を講じなければ、解体撤去される(写真:京都市提供)
屋根が朽ち、倒壊の危険性が高いとして、京都市が住所を公表した空き家。所有者が名乗り出て対策を講じなければ、解体撤去される(写真:京都市提供)

 両親が亡くなったり、施設に入ったりして、空き家となった実家をどうするか──こうした「空き家問題」が、現役世代にとっても切実な問題になってきた。そこで隆盛の兆しをみせているのが、「空き家ビジネス」だ。

 5月26日、「空き家対策特別措置法」が全面施行されると、「危険な空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」との情報が駆け巡った。今まで放置していた人たちは慌てふためき、地方や郊外に実家を持つ“相続予備軍”が「明日はわが身」とおののき始め、空き家問題はこれまで以上に注目されることになった。報道番組や雑誌では頻繁に特集が組まれ、「空き家ビジネス」なる言葉も生まれた。

 空き家問題に詳しいオラガHSC代表取締役の牧野知弘さんは言う。

「空き家を放置している人は、売ろうか、貸そうか、壊そうかという“結論”を先送りにしていた。特措法の施行で、その決断を促し、“潜伏”していた空き家を表面にあぶり出す効果は期待できると思います」

 そうはいっても、すぐに“決断”できる人たちばかりではない。そこで隆盛の兆しを見せているのが、「空き家管理サービス」。NPO法人だけでなく、大手から中小まで民間企業もこぞって参入し、月額5千円から1万円程度で、空き家の管理を代行している。代行内容はプランにより異なるが、見回り、郵便物整理、草刈り、通風、通水などが一般的で、オプションで独自サービスを付加している企業もある。

 都心に勤めていて実家に帰れない、きょうだい間で合意が取れないなど、やむなく「空き家状態」にしなければならない人に重宝されている。

「空き家管理は収益性の高い事業ではない。狙いは、マーケットに出てきていない物件(顧客)を囲い込み、いざ売却、賃貸するとなった段階で利益を得ることです」(牧野さん)

AERA 2015年8月17日号より抜粋