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 実写映画「進撃の巨人」前・後篇が8月1日、9月19日から連続公開される。「別冊少年マガジン」にて連載開始し、アニメ化で人気に火が付いた。時にグロテスクな描写があるにもかかわらず、女性からの人気も高い。その理由とは。

 作品の人気を語るうえで、アニメの影響は欠かせない。フィギュアメーカーで営業職として働く女性Cさん(29)は、アニメ化を機に「進撃の巨人」の世界にのめり込んだ。

 コミックは連載が始まったばかりのとき、第1巻を友だちから貸してもらって読んだ。が、そのときは「あまりピンと来なかった」という。

「アニメでファンになった理由は、映像が美しかったのと、声優陣が豪華だったから。私はリヴァイ兵長が好きなのですが、原作よりもスポットが当たるシーンが豊富だったので楽しめました」

 巨人が人間を食らうグロテスクな描写が多いにもかかわらず、「進撃の巨人」には若い女性のファンが多い。「ホラー論・怪物論」に詳しい早稲田大学文学部・大学院教授の髙橋敏夫さん(63)は、このグロテスクさと女性ファンの関係を「解決不可能性」という言葉で結び付ける。

「私は00年ごろから、1990年代に始まった日本のホラー小説を研究していますが、小野不由美や岩井志麻子、坂東眞砂子など、書き手の多くは女性です。90年代からの日本におけるホラー小説の問題点は、解決不可能性が連鎖するところにあります。問題は次々と起こるのに、一向に解決しないばかりか、解決の途が示されない。『進撃の巨人』は、まさにこの解決不可能性の連鎖が物語自体になった作品だと思います」

 解決の糸口すら見当たらない不安定さが、むしろ女性の心を刺激するということか。

 講義の中で「進撃の巨人」を取り上げたこともある髙橋さんは、東日本大震災が起きて以降、作品に対する学生たちの受け取り方が変わったように感じている。

「おそらく『進撃の巨人』という作品は、連載が続いていく中で、その時々に起こる大きな事件や問題を抱え込み、雪だるまのように膨れ上がっていく物語なのだと思います」

 であるとすれば、「進撃の巨人」現象は、まだまだ終わりそうもない。

AERA 2015年8月3日号より抜粋