「黒一点」はツライ?(※イメージ)
「黒一点」はツライ?(※イメージ)

 女性ばかりの職場で、孤軍奮闘する男性社員。紅一点ならぬ「黒一点」とも言える男性の奮闘ぶりを追った。

 舞台は、都内の大手出版社。若い女性向けのファッション誌の編集部は騒然としながらも、ちょっと前にドラマで見たとおりに華やいでいた。

「よく、女性誌勤務をうらやましがられるんです。でも、全然そんなことない。女子部署の男子は、女子がやりたくないことをやるためだけに存在しているようなものなんです」

 デスクを務める30代の男性Bさんは首を振る。

 5年前に男ばかりの部署から異動してきたときには男性の同僚が複数いたが、全員が異動。残されたBさんは、約1年半にわたって「黒一点」を経験した。最近、先輩の男性が異動してきて、あらためて思う。

「男が1人と2人では、全然違いますね。女子からの『なに、こいつ』という視線が、分散されるといいますか。1人のときは、本当に大変でした」

 困ったのは、女性からの冷やかしだった。編集者と仕事上のやり取りをしていただけなのに、相手がちょっと美人だと、「ほんと、Bさんって○○のこと大好きだね」と、おちょくられる。女性との距離感を保つことを大切にしてきたBさんにとって、その「イジり」は心外そのものだった。女性誌編集部で働いて「女性化」する男性もいるが、Bさんの場合は逆。

「小学生ぐらいのときって、女子が純粋に敵だったりするじゃないですか。あんな感じです」と笑う。

 厳しい雑誌の世界でハードワークする女性たちを心のなかでは尊敬する一方、最近あることに驚いた。

「少数派の男性が苦労しているということに、気が付いていないんですよね、多くの女性は」

AERA  2015年8月3日号より抜粋