そして迎えたショー本番。周囲は「昨季のレベル」にどれくらい近づいているのかと注目し、5月の「ショーで今季のショートを滑るかも」という言葉の実現を期待したが、浅田が披露したのはエキシビション2曲。新たな魅力にあふれたものの、ジャンプは得意の3回転とダブルアクセルのみ。試合に向けた難度の高いジャンプを見せることはなかった。

「まだ昨季の状態ではありませんが、練習を積み重ねて自分の力が戻ってきている実感はあります。ジャパンオープンはフリーのみなので、ショートはまだ練習を再開していません」と説明し、記者の「例年より注目度が高い」という声も、「滑ってみて、去年と何かが違うとか変わったことはないです」とかわした。ヒートアップする周囲を横目に、浅田自身は冷静。

 これまで浅田は、シーズン前半で本調子でなくても、後半にはピークを合わせてきた。 復帰に向けて相談相手になった伊藤みどりは言う。

「新たな気持ちで真央ちゃんなりの目標を達成してほしい。10月はまだ勝負じゃない。12月の全日本選手権や来年3月の世界選手権に向けて、『持っていき方』は真央ちゃんのペースでいい。それを忘れないで」

 浅田自身も、こう話した。

「いま大事なのは平常心。8月、9月が重要な時期になると思うので、毎日自分がやるべきことをやって、いつも通りという気持ちを心がけていきたい」

 心を落ち着けて、見守りたい。

AERA 2015年8月3日号より抜粋