もう面倒なので以降、挫折の顚末は省略するが、ほかに食事系では、「リンゴだけ」とか「こんにゃくだけ」とか。そういえば、コンビニ強盗みたいなサウナマスクや、肉屋のショーウィンドーに並んだ気分になるラップ腹巻きなど、部分痩せのための「巻きもの」にも、けなげに真顔で取り組んだ。

 2000年代になると、挫折はもはや予定調和となり、自分にとってダイエットは、「参加することに意義がある」的な娯楽の一種に。世のダイエッターたちがココアやバナナの機能に注目するワンランク賢いステージに進んでいくのを尻目に、なぜか通販系のへんてこ美容家電方面に舵を切っていく。

 たとえば、一世を風靡した「ロデオボーイ」。テレビを見ながら、座ってるだけで痩せるってすげー!とひと目惚れしたものの、届いたそれはあまりの重さ。居間のある2階まで運べず、玄関に置いたままで、ひとり黙々と揺られるハメに。人が来るたびに、そこに置いた理由を説明するのがいやになり、玄関から実家に発送してしまった。

 そして2013年、いよいよ私のダイエット人生に、本物の光が差す。それもLED並みに長持ちするやつ。「サルコペニア肥満解消ダイエット」だ。筑波大学大学院・久野譜也教授の本を手伝ったことから、この方法の「広告塔」を買って出たのがきっかけだった。

 ちなみにサルコペニア肥満とは、筋肉が衰え、そのスペースを脂肪が占領する肥満の一種。これを解消するには、1日1800kcal(男性は2千kcal)までの食事制限と、8千歩のウォーキング、そして部屋でできる10分間の軽い筋トレのセットが効くと本は説く。

 料理下手、野菜嫌い、面倒くさがり、ジャンクフード好きなど、数々のハンディを乗り越えて、やりましたとも。それも1年間。で、8キロマイナスを達成。戻りだって遅い。 ダイエットは時間と手間をおしまなければ、成功する。これが、数十年かけてやっとわかった結論だった。

AERA 2015年7月20日号より抜粋