雇用ジャーナリスト海老原嗣生さんえびはら・つぐお/1964年生まれ。上智大学卒業後、リクルートエージェント、リクルートワークス研究所「Works」編集長などを経て、コンサルティング会社・ニッチモを設立(c)朝日新聞社 @@写禁
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雇用ジャーナリスト
海老原嗣生
さん
えびはら・つぐお/1964年生まれ。上智大学卒業後、リクルートエージェント、リクルートワークス研究所「Works」編集長などを経て、コンサルティング会社・ニッチモを設立(c)朝日新聞社 @@写禁

 近年、40代~50代のミドル社員が、会社の人員のボリュームゾーンになりつつある。人員は多くとも、ポストの数は限られている。今後は年功昇給のシステムを維持することは難しくなると、雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんは指摘。次のように話す。

* * *
 年功昇給というシステムは、能力仮説(能力はたゆみなく重ねられる)に基づくものだ。これまで日本企業は、この仮説をもとに人事処遇を考えてきたが、現実にはある年代から能力の伸びは鈍化し給与だけが増えるという不均衡が起きていた。この不均衡を解消するために役職定年なんてものが必要となっている。これは、もらいすぎの給与を調整し、身に余るポストを後輩に譲る制度。能力仮説通りなら、こんな制度はいらないはずだ。

 今後、年功昇給を維持していくことは難しいだろう。私は、これからは日本型と欧米型のハイブリッドを目指す必要があると考えている。

 例えば、35歳まではこれまで通りの日本型だとしても、35歳以降は職能等級という概念ではなく、ポストに就くことで昇給・昇格する制度に変えるべきだ。ポストの数は限られるので、昇給は難しい。

 これが欧米型のシビアな人事処遇だ。年功昇給は存在せず、出世する人としない人が明確に分かれる。

 現在の日本でも、50歳までに課長になる人が50%台にまで落ちており、今後はさらに減少していく。「上が見られなくなった人」は、年収も頭打ちになるので、子どもの大学進学などを考えると、妻が専業主婦なら働いてもらわなくてはいけない。お互い忙しいので家事・育児も平等にやる必要が出てくる。

 これは決して特殊なことではない。日本も「世界標準」になるだけの話だ。これからは、「係長でも十分」という時代を見据えて、キャリアを考える必要があるのではないか。

AERA 2015年7月13日号より抜粋