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 これまでも斬新な人事制度を取り入れてきたサイボウズ。給与体系では「部長より部下のほうが給料が高い」という事態も起こりうる、こちらも新しい制度を採り入れている。

 社内評価は重視せず、「市場価値」で社員の給与を決定する──。グループウェアなどの開発を手掛けるサイボウズでは、2010年にユニークな評価制度に取り組み始めた。評価を決めるのは「対外的価値」と「対内的価値」。だが、二つのうち、給与のレンジは、対外的価値によって決定される。人事部マネジャー、松川隆さんは言う。

「この報酬体系の導入により、給与の評価が透明で公平となり、人事評価後の不満が大幅に減少しました。社員はどこでも通用する人材になりやすく、会社に依存することもなくなる。市場価値に見合った報酬を支払うため、社員を『サイボウズが好きだからここで働いている』という状態に導きやすい」

 1997年の会社設立以来、同社はさまざまな人事制度を試みたが、いずれも十分に機能しなかった。例えば、目標管理の導入時は、ストイックに目標を立てる人とそうでない人との間で不平等が生じた。相対評価を取り入れた際は、2期連続で最低評価を受けると退職勧告をする仕組みで、社内がギクシャクした。

 評価に対する公平性を追求するなかで、現在の制度が形となっていった。ただ、時々の労働市場の趨勢に合わせ、給与を乱高下はさせない。一般的な賃金カーブに沿いながら各人に差をつける。これにより、目先の給与にとらわれず、会社と社員が信頼関係を保ちながら長く働ける環境が整うのだという。今後は、派遣社員なども制度の対象として検討しており、「同一労働・同一賃金」の考え方に近い。市場価値が高い希少なスキルの持ち主なら「部長より部下のほうが給料が高い」という現象も起きる。

AERA 2015年7月13日号より抜粋