小さいサイズ専門「feast」のブラジャー。「小さい胸は和服が似合うくらいしかいいことがない、と思われているのはもったいない」(ハヤカワさん)(写真:「feast by GOMI HAYAKAWA」提供)
小さいサイズ専門「feast」のブラジャー。「小さい胸は和服が似合うくらいしかいいことがない、と思われているのはもったいない」(ハヤカワさん)(写真:「feast by GOMI HAYAKAWA」提供)

 ずっとおとしめられてきた貧乳に脚光のあたる時代が来たらしい。

 中学生頃からどうやら私は貧乳らしいと気づき、貧乳の地位がおとしめられていることに重大な問題意識を持ってきた記者(29)に、衝撃が走った。昨今、貧乳を「シンデレラバスト」と言い換える向きがあるらしい。

 この名を世に出したのは、小さいサイズの胸専門のランジェリーブランド「feast by GOMI HAYAKAWA」デザイナーで、現役大学生のハヤカワ五味(ごみ)さん(19)。自身も胸にコンプレックスがあったハヤカワさんは、同じ思いを持つ女性がランジェリー選びを楽しめ、自信を持てるものを作りたいという思いで、このブランドを立ち上げた。

 昨夏、初めて商品を売り出す際、「貧乳」と言うのに抵抗があった。まずは「品乳」という言葉を使ったが、「ひんにゅう」という音の響きが残ってしまう。そこで考えたのが、洋服などの小さいサイズを表す「シンデレラサイズ」からインスピレーションを得て作った言葉「シンデレラバスト」だった。

 彼女がホームページやツイッターでこの言葉を使い始めると、たちまち話題に。限定生産で売り出したランジェリーは、ブラジャーとショーツのセットが早いと15分、遅くても1日半で完売するほどだった。

 小さい胸の人にしか似合わないデザインをウリにしたハヤカワさんのブランドは、貧乳女性に、自己肯定感を与えた。とはいえ、反響はいいものばかりではなかった。ネット上で言葉が一人歩きした結果、「巨乳が貧乳を馬鹿にして作った言葉だ」などの批判もあった。記者自身も、背景を知らずにこの言葉を聞いたときは、正直なところ複雑な気持ちだった。表現を変えれば私の胸が膨らむわけではない。腫れ物扱いされるようで、むしろ傷つくとすら思った。

「私にとって、巨乳、貧乳という表現は、男の人から見た女性の胸というイメージが強い。シンデレラバストは、女性がありのままの自分を楽しむ言葉になってほしいと思っています」

 貧乳コンプレックス歴でいうと10 年先輩の記者が、そんなハヤカワさんの言葉に救われた気がした。

AERA 2015年7月6日号より抜粋