東電も“出血”は覚悟のうえだ。今年度の供給計画を発表する際、新電力参入の影響について、10年後に需要の2割程度を失うとの見通しを示した。実際、すでに自由化されている工場などの特別高圧とスーパーなどの高圧の契約で、全販売電力量の6~7%相当を失った。それだけに家庭向けの自由化では、域内の契約世帯をつなぎとめ、域外で新規顧客を増やす策が急務なのだ。

 東電は今、「3.11」の福島第一原発事故で巨額の賠償を背負う中で、分社化と全面競争への対応を迫られている。それには発想の転換が必要だ。眞田室長によると、これまで重視されたのは、「安価な燃料で発電した電気を安定供給すること」だった。だが、自由化後は、消費者が電力会社を選ぶ時代になる。

「電気には色も形もデザインもない。消費者の一番の関心事は料金。あとは異業種と組み合わせた新サービスで差別化するしかありません」(眞田室長)

 そこで異業種との提携に活路を見いだそうとしているのだ。中でも話題は、ソフトバンクとの提携話だ。域内は通信大手3社と組んで、他電力の攻勢に備え、足場のない域外はソフトバンクの活用を考えているとみられる。域外へ攻め込むには、消費者に関する情報が必須だからだ。ソフトバンクと組むことで、スマートメーターなどによる「エネルギーの見える化」や、家電の遠隔制御、高齢者らの見守りサービスなどでも協力が期待できる。

AERA  2015年7月13日号より抜粋