「地元に住み続ける人がいる中、自分たちだけ支援してほしいなんて思っていないんです。でも、『自己責任』と言われるたびに、『私のせいじゃなかったはず』と思ってしまう」

 3万6千人いるとされる自主避難者のうち、応急仮設住宅の居住者は2万5千人、およそ9千世帯と推計されている。住宅の無償提供費用は年に80億9千万円ほどとされ、1世帯にすると最高でも126万円ほどだ。一方で、居住制限区域では1世帯の除染費用が1億円に上るケースもあるという。

 今回、無償提供打ち切りに代えて示されたのは、「福島県内への引っ越し費用の補助」「低所得者への家賃補助」「公営住宅確保」「コミュニティー強化」の四つだが、財源も開始時期も未定の状態だ。

 磯貝さんと同様、福島県内の自宅のローンを抱えながら新潟県に自主避難中の男性(40)は、たとえ一家がそろっていても、

「貧困のリスクは高いですよ」

 と話す。

 原発事故直後の11年4月に妻の妊娠が発覚。「妊婦や子どもは放射線の影響を受けやすい」と知って避難を決めた。初産の妻を1人で避難させることは、当初から考えなかったという。

●いま必要なのは社会全体の共感

 その年の夏に新潟県に避難してNPO団体で働きはじめたが、収入は原発事故前の半分以下になった。その後、2人目の子どもも生まれ、一家4人月収20万円以下の切り詰めた生活が続く。

「自主避難者でかつ夫も避難しているケースは、『働き手がいるだろう』と支援の枠から外れやすい。時間の経過とともに『二重生活を続けるのは厳しい』と判断して母子の避難先に夫が合流するケースもあるが、年齢によっては思うように転職ができないなど、みんな厳しい」

 災害対応を続けてきた津久井進弁護士は指摘する。

「いま必要なのは、それぞれの立場に対する社会全体の理解と共感。住宅支援は生活基盤に直結する最も大切な支援で、それを打ち切ることは避難者の生存権を奪うことにほかならない」

 そして、続けた。

「避難者一人ひとりが置かれている状況は違う。避難の権利を認め、実情に応じてパーソナルサポートをしていくべきだ」

 すでに打ち切りの決定は下ったが、撤回を求める署名活動が続いている。

AERA 2015年7月6日号