授業には各企業・組織の社員らの姿もあるが、授業を担当する五百木誠准教授は、「問題をどう解いてほしいのかは、課題を出している企業自身もわかっていない。聞き出そうと思ってもだめ。問題をどう捉え直すか。自分たちで考え続けるしかない」と学生たちに指導する。

 大手自動車メーカーで働きながら通っているのは、中田実紀子さん(32)だ。火・木・土の授業のほか、勉強会もある。仕事と両立させるには睡眠時間を削るしかない状況だが、

「この道を選んで本当によかった。自分の視点の狭さに気づかされます。この投資がのちに必ず戻ってくると思っています」

 広告会社でマーケッターをしていた広瀬毅さん(41)は、会社を辞めてSDMの門をたたいた。

 会社員時代は、働きながらいつも行き詰まり感を抱えていた。思考が固まっているようだった。経験を重ねるにつれて、このへんに落としどころがあると、なんとなくわかってきて、無難な線に落ち着くことが多くなった。他社と競合するケースでは、各社横並びの大差ない提案しか出せていないことも知った。

「ここでずんと突き抜けたら、案件が取れるし、それが世の中に広まったらお客さんもうれしいはず。イノベーティブなことをずばっと言い切れる、ちゃんとした提案をできる会社だけが、10年後も生き残れると思った」

AERA 2015年6月22日号より抜粋