※イメージ
※イメージ

 ダイバーシティーという言葉を頻繁に耳にするようになった現在、多様な価値観に触れる機会の重要性は多くの企業が感じている。それを研修ではなく、休職制度という形で社員に提供しているのは、星野リゾートだ。約10年前から最長2年間の「学習休職制度」を導入している。人事部の小金井成子さんは言う。

「当社は人間の幅がサービスの幅に直結すると考えています。必ずしも大学に通うなどの、いわゆる『勉強』が理由でなくても、休職を認めています。現状の利用者は年3人くらいですがもっとたくさんの社員に使ってほしいと思っています」

 制度利用者の多くは20代後半から30代。MBA(経営学修士)取得や語学留学を選ぶ人もいれば、インドを放浪する人、他のホテルで働く人、米国の料理専門大学に留学した人もいたという。

 この制度を利用し、米シカゴに1年間、語学留学して今年4月に戻ってきたのが、「星のや竹富島」の総支配人、神宮幸穂さん。2006年に中途入社し、休職前は星野リゾートが運営する宿泊施設「界 加賀」の総支配人も務めた。海外からの客に会うたびに英語を勉強したいと思っていたが、管理職業務に追われ、なかなかまとまった学習の時間がとれないと感じていた矢先、改装のため「界 加賀」の一時休館が決まった。それがきっかけとなって、留学を決意した。

「休職中は、3カ月を過ぎたころから必死に勉強しました。日本文化が大好きでこの仕事をしてきましたが、国外に出ることで、海外に日本文化の良さを伝えたいという気持ちが強まりました。当社は海外進出を始めているので、先々そういう事業にも積極的に携わっていく自信がつきました」(神宮さん)

AERA 2015年6月29日号より抜粋