こちら葛飾区亀有公園前派出所 (第85巻) Amazonで購入する
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 世界からも注目される日本の一大コンテンツ・漫画。単純に面白いだけじゃなく、そこからは学ぶことも多い。

「ミドリムシ」には、エネルギーや食料問題、地球温暖化を解決する力がある。そう信じた出雲充さんは、「ユーグレナ」を起業し、世界初となるミドリムシの屋外大量培養を実現。2020年には、バイオジェット燃料の実用化も目指す。

 出雲さんが、「起業家のバイブル」と言うコミックがある。秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』だ。なんだってこれが、そう言えるのか。こう返ってきた。

「(主人公の)両津勘吉は、作品の中で何にでも挑戦しますよね?」

 うん、確かに、両津はさまざまなことに挑戦していた。演技経験ゼロにもかかわらず、ハリウッド映画に出ようとしたし、フルマラソンの大会への挑戦もあった。ロケットや人工衛星のゴミを回収するバイトを持ちかけられると宇宙にまで飛んだ。

 コミック85巻では、絵本コンクールに挑んだ。ここで両津は、おとぎ話「桃太郎」を現代的にアレンジ。桃太郎が、キジ、猿、犬を従えて「鬼が島」に攻め入るシーンを大胆に書き換えるのだった。

 鬼の本拠地を攻めるのに「昼はあまりに不利」だから、夜襲に徹する。桃太郎の派手な陣羽織もNG。黒ベースの迷彩服にしようなどと、創意工夫をこらす。かくして描きあげた「新桃太郎」で、見事に大賞を得るのだった。

 同じ85巻に収録の「ザリガニ合戦!?」は、出雲さんにとって忘れられない話だ。ある日、高級レストランで「ザリガニ」が珍重されていると聞くと、両津は葛飾区内でザリガニ釣りに乗り出す。

「できるかできないかは、やってみないとわからないんです。釣るポイント、エサの種類。やってみて初めて経験になる」(出雲さん)

 起業も同じなのだ。IT企業「ドロップボックス」共同創業者ドリュー・ヒューストンも、相通ずることを言っていた。

「準備や練習なんてしている暇はない、毎日時間は過ぎていくばかり。これからは完璧な人生ではなく面白い人生にしよう!」

AERA 2015年6月22日号より抜粋