遠くに見えるのは東海道線の鉄橋。吉田さんはこの付近から対岸を目指した。市街化調整区域のため、周囲に民家はなく。地域の防犯パトロールの範囲外だった(撮影/編集部・内堀康一)
遠くに見えるのは東海道線の鉄橋。吉田さんはこの付近から対岸を目指した。市街化調整区域のため、周囲に民家はなく。地域の防犯パトロールの範囲外だった(撮影/編集部・内堀康一)

 高校1年の男子生徒が水死体で見つかった。集団暴行を受けた後、彼らに「川の対岸まで行って戻ってこい」と命じられた結果だった。「いつもの仲間」と一緒だったのに、なぜ。

 6月6日午後11時ごろ。愛知県刈谷市の県立高校1年生の吉田達哉さん(15)は、同市を流れる逢妻(あいづま)川に足を踏み入れた。「仲間」のはずの10人ほどが注視する中、必死に対岸を目指したが、「もう無理」という声を最後に水中へ消える。仲間の一人が110番通報したが、3日後の9日になって、渡ろうとしたところから350メートルほど下流で遺体となって発見された。

 司法解剖の結果、死因は水死。愛知県警は6月7日、14~16歳の3人の少年を暴力行為等処罰法違反(集団暴行)の疑いで逮捕した。

 なぜ、吉田さんは命を落とさなければならなかったのか。現場にいたのは、逮捕された3人と吉田さんの「彼女」を含め、いつも行動を共にしていた仲間だ。逮捕された少年の一人を伴って、名古屋市の熱田神宮であった「熱田まつり」に出掛けた吉田さんは、その後、仲間たちに呼び出され、JR逢妻駅から西に歩いて10分ほどの河口に近い川べりに向かった。

 彼女がいるのに、祭りでほかの女性をナンパした──。5月にも、同様のことでトラブルになっていたという吉田さんは、集まった仲間のうち3人から、殴る蹴るの暴行を受け、こう言われたとされる。

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