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 あっという間に市民権を得た「イクメン」だが、さらにその上の要求をつきつける妻もいる。そしてその理想の高さに、息苦しさを感じる夫もいるようだ。

 大手サービス企業に勤務する男性(37)は「ザ・完璧主義」の年上妻との関係に悩みが尽きない。6歳の娘のために育児書を読みあさり、「意識高い系」のママ友ネットワークから仕入れた情報で構築された妻の「父親像」には、十分に「イクメン」の男性もまったく追いつけない。ファッションにあまり興味のなかった男性は、「身だしなみは、周りに不快感を与えないための義務だから」と、妻が許可したコーディネート以外では外出できない。

 さらに、「子どもが視覚から受けるインパクトは絶大なの!」とEテレ以外を見るのは禁止。妻子が寝てからバラエティー番組の録画を見るのがささやかな楽しみだ。趣味のアニメも、「子どもの教育に不適切」と断罪され、アニメ雑誌は自室で隠れて読むしかなくなった。

 もはや、育児分担というレベルをはるかに超えた妻の「要求」。それをのまざるを得ない状況を、男性はこう説明した。

「このご時世、会社は社員を守ってはくれない。家庭に居場所がなくなったら終わりですから」

 武蔵大学社会学部の田中俊之助教(男性学)は、「男性は仕事の価値基準だった『経験と業績』に縛られやすい。イクメンが浸透してきた今、子育てでもその価値観にとらわれて苦しいのかもしれません」と分析。続けてこう指摘した。

「男性は弱音を吐くことが苦手で、求められる育児や家事を『できない』とは言いたくない。でも、長時間労働が是正されない限り、できないことはできません。これは、家庭だけでなく、労働環境改善とセットで議論されるべき問題です」

AERA 2015年6月8日号より抜粋