レシピ考案から合コンまで!進化するAI 奇想天外だけど意外といい
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本物のシェフとコラボした英語の料理本『Cognitive Cooking with Chef Watson』で紹介されている「和風わさびカクテル」。すっきりした味わい(撮影/福光恵)
編集部からのミッションは、「人工知能と交流してきて」。彼らに使われる日が来る前に、ひとつ、稽古をつけてやりますか。(ライター・福光恵)
人工知能(AI)といえば、そもそも人の脳のまねっこ。なのに数十年後には「人の脳を超える」ともされる不義理なヤツでもある。ホントにそんなことあるの?と疑念を抱きつつ、話題の三つのAIと交流した。
まず最初は、もっとも有名なIBMの人工知能型コンピューター「ワトソン」だ。
2011年、米国のクイズ番組でクイズ王を負かし、巨額の賞金をゲットしたことで有名になったワトソン。実は「シェフワトソン」として料理界にも進出していた。このシェフの仕事は料理じゃなくて、新しい料理の創造。つまりレシピ作りだ。アメリカの料理雑誌「ボナペティ」とコラボして作った英語のサイト「コグニティブ(認知)・クッキング」に行けば、いつでもそのお知恵を拝借できる。
●奇想天外だけど美味
さっそく訪ねてみた。食材などを指定すると、その場でワトソンが創作料理を考えてくれる。「ボナペティ」にある9千のレシピのパターンを学習し、食材の成分情報などと合わせて、人知を超えた料理を編み出すらしい。家の冷蔵庫に本当にあった食材を指定してみる。今でしたら「チョコレート」「のり」なんかがご用意できますが?
加えて画面で「日本食」「煮込み料理」などをチョイスすると、すぐさま、「チョコレートとのりの日本風煮込み」なるレシピを提案してきた。
辞書を片手にレシピに示された他の食材を求めてスーパーに走り、レッツ認知クッキング!
「ふたをして1時間半、はずして1時間半以上煮込む」
など、途中けっこうなむちゃぶりもあったけど、修業と思ってほぼレシピ通りに調理を進めること4時間。チョコとココアパウダーとのりにまみれた、妙に黒っぽい鶏と野菜の煮込み料理が出来上がった。
おそるおそる食べてみる。と、これが意外にまずくない! というか、DASHIやのりの風味と、ほろ苦いチョコの奇想天外なマリアージュが、何ならうまいんですけど。一方、困ったことも。レシピはアメリカ流の「7人前」。黒い物体が、鍋にたっぷり残ってる。
「(このレシピは)ワトソンによって発見され、あなたによって作られた」
というコピーから察するに、常識にとらわれないレシピで人間の創造力を刺激するのがこのシェフの真の使命なんだろう。チャレンジ精神を刺激され、僭越ながら残った鍋にカレー粉をインしてみた。ところが……カレーの刺激でマリアージュは消滅、そこらのカレーに。シェフワトソン、恐れ入りました。
●言いそうな答えを生成
続いて交流させてもらったのは、今をときめくメディアアーティストの真鍋大度さんが作っているAIだ。海外アーティストのPVや、アイドルグループPerfumeのライブ演出における技術開発など、プログラミングスキルを持った気鋭のメディアアーティストとして注目されている。
その真鍋さんがここ数年取り組んでいるのが、AIを使った実験的なアートだ。たとえば、「プロフェッショナルとは」という問いに対する、真鍋さんの答えを生成するAI。昨年、出演したNHKの番組「プロフェッショナル」のために作ったもので、いまもネット上で公開されている。
サイトの「生成」ボタンを押すと「美術館に映画を置く人かもしれません」だの、「実践ではなく、明らかをちょっと求める人でしょうか」だの、毎回違う答えが画面に出現。何だか不思議な、でもシュールレアリスムの詩人の名言だと言われれば、ああそうですかと信じかねないような言葉は、コンピューターが“考えて”作っている。真鍋さん本人が8年間書きためていたブログやインタビュー記事、他のプロフェッショナルな人々の名言などをコンピューターに解析させ、本人が言いそうな答えを生成するのだそうだ。
