自分流に憲法を解釈し、戦争ができる日本へとかじを切る。そんな首相に「間違っている」と声を上げる自民党国会議員がいる。

 自民党総務会は、国会に提出する法案の可否を議論する党の関門だ。5月12日、党本部で開かれた会合に安保法制改正案がかかった。衆院愛媛2区選出の議員、村上誠一郎が執行部に詰め寄り、珍しく紛糾した。

「ここでいう武力行使とはどんなことか」「憲法との整合性はどうなる」「自衛隊員に犠牲者が出る。その覚悟はあるのか」

 総務会の慣行は、「異議なし」の声と拍手での議決。この日の議論は2時間を超え、採決が迫ると議決の場に居ることを拒否し、村上は退席した。廊下で報道陣に取り囲まれ、言った。

「日本はワイマール共和国が犯した誤りを繰り返しかねない」

 第1次世界大戦で敗れたドイツは、当時としては最も民主的な憲法を制定して再出発した。ところが、ヒトラー率いるナチスは戦勝国への反発をあおり、全権委任法を議会で通してワイマール憲法を葬り去った。

「内閣が都合のいいように憲法を解釈し、自衛隊法を変え、憲法を空洞化する。そんなことを許したら三権分立も法治国家も崩れてしまう。国会議員が声をあげないでいいのか」

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