妻や子どもを大切にする夫「イケダン」への道は険しい?(※イメージ写真)
妻や子どもを大切にする夫「イケダン」への道は険しい?(※イメージ写真)

 18歳未満の子を持つ世帯の母親の6割以上が働く今、育児に積極的に参画する「イクメン」は完全に市民権を得た。2009年にはファッション誌「VERY」が、仕事をバリバリこなしながらも家庭をおろそかにせず、妻や子どもを大切にする夫を「イケダン(イケてるダンナ)」ともてはやした。
 
 13年に「ぐるなび」が行った「『イケダン』に関する意識調査」によると、イケダンの要素トップ3は「バリバリ働く」「料理をする」「さわやかな外見」。ただ、このうち妻から見て夫が実践できているのは「バリバリ働く」だけで、夫につけた点数は、平均71点だった。決して低い数字ではない。だが実は、妻が“足りない”とする「残り30点」に、苦しんでいる男性が少なくないのだ。

 IT企業勤務の男性(41)はこう嘆く。

「初期段階で妻の“満足のハードル”を上げてしまったのがよくなかったのかもしれません」

 フルタイムで医療関係の仕事に就く妻(38)との間に5歳の息子がいる。男性は世にいう「イクメン」で、週に3回は仕事を早く切り上げて保育園にお迎えに行き、子どもにご飯を食べさせてから風呂に入れ、寝かしつけもする。最初はどれもおぼつかなかったが、妻に教えてもらいながら徐々に慣れていった。育児がイヤだと思ったことはない。むしろ、他の男性よりも「子育てスキルが高い自分」を誇らしく思っていた。

「妻に『理解のある夫』だと思われたい気持ちもあったので、周りの人が『すごい、すごい』とちやほやしてくれることで、充実感がありました」

 ところが、40歳を前に管理職に昇進したこともあり、仕事の責任が重くなった。それまで通りの分担ではキツイと感じ始めたが、妻も仕事が充実して忙しくなっていた。以前は、妻に「残業で遅くなる」「出張で3日くらい家を空ける」と言われても、「わかった」と引き受けてきたし、子どもが保育園で急に熱を出しても仕事を調整して迎えに行った。今度は、管理職として忙しくなる自分を慮(おもんぱか)って、少しは育児分担を“引き取って”くれるだろう──。しかし、結果はNO!

「妻から『あなたに家のことができるのは私のおかげ』と言われました。ここまで育てたのに、いまさら『やってもらう権利』を奪われたくない、ということでしょう。一度、基準が出来上がったら、そこから下げるのは難しい」

 この男性のように、育児や家事のスキルが高く、そもそも「平均点」の高い夫にとって、妻が要求する「残り30点」を獲得するのは容易ではないのだ。

AERA 2015年6月8日号より抜粋