優勝記者会見もいぶし銀の雰囲気。左から優勝したボノム、3位のドルダラーの各選手。右端の室屋選手は準決勝にあたるラウンド・オブ・8で敗れ、8位。新しい機体で感覚がずれたという(撮影/角田菜穂子)
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優勝記者会見もいぶし銀の雰囲気。左から優勝したボノム、3位のドルダラーの各選手。右端の室屋選手は準決勝にあたるラウンド・オブ・8で敗れ、8位。新しい機体で感覚がずれたという(撮影/角田菜穂子)
レースは速さだけでは決まらない。エアゲートを通過するときの飛行姿勢、体にかかる負荷が10G以下であることなどのルールがあり、違反すると失格になることも(16枚の写真を合成) (c)朝日新聞社 @@写禁
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レースは速さだけでは決まらない。エアゲートを通過するときの飛行姿勢、体にかかる負荷が10G以下であることなどのルールがあり、違反すると失格になることも(16枚の写真を合成) (c)朝日新聞社 @@写禁

 操縦桿を巧みに操る、白髪の精悍なベテランパイロットたち。エアレースは、渋いおじさま好きの女子にも人気だ。

 ヒューンという音と共に風を切って通り過ぎていくカラフルな小型飛行機。パイロットは巧みに機体を操り、海上に立てられた巨大なパイロンのような2本のエアゲートの間を水平に、あるいはスラロームしながら通過し、ゴールを目指す。

 5月16~17日、日本初の「レッドブル・エアレース」が千葉市の幕張海浜公園で開催された。エアレースとは一人乗りのレース用プロペラ機で競うスポーツだ。決められたコースをルールに沿って飛行し、最速ラップのチームが優勝する。最高時速が370キロに達することから「空のF1」とも呼ばれる。

 日本人の室屋義秀選手(42)が出場したこともあり、テレビやネットニュースなどでレースの存在を知った人も多いだろう。

 それもそのはず、日本でこれまで紹介されていたのはスポーツ専門チャンネルが中心。知る人ぞ知るスポーツだった。ところが、フタを開けてみると2日間で12万人が観戦。初開催にもかかわらず、他の開催地の観客数を上回った。

 レッドブル・エアレースの特徴は、空港での開催が多い他の航空イベントと異なり、都市部のヨットハーバーやサーキット場などを使うことだ。今年は英アスコット、米ラスベガスなど8都市を転戦し、ワールドチャンピオンを決める。

 ユニークなのは、高度な航空技術が必要になるだけに40代以上のベテランパイロットが活躍していることだ。多くが空軍のいわゆるトップガン出身。千葉大会で優勝したボノム選手(英)は50歳、3位のドルダラー選手(独)は44歳。斯界のゴッドファーザーことベゼネイ選手(ハンガリー)にいたっては58歳である。

 初日の予選から会場で観戦した会社員の牛水綾さん(32)は、テレビ観戦歴6年。「渋くて格好いいおじさまたちの宝庫。枯れ専の女性におすすめ」と言うだけあって、47歳のアルヒ選手(オーストリア)のファンだ。

「チケットが2日間通しでも3万円は高いと思いましたが、来てみたら、入場はスムーズだし、快適な椅子が用意されているし、もっと高い席でもよかったかも。大型ビジョンでレース展開を解説してくれるし、風も感じるし、テレビよりやっぱり生で見るほうが面白いです」

AERA 2015年6月1日号より抜粋