■ガスの分布を音に

 川村さんたちは、70パターンの観測画像を分析し、ガスの分布を円盤に再現。それをオルゴールに掛けてみると、一枚一枚違った音が聞こえた。

「こんな音がするんだって感動しました。星が死んでいく場面というストーリー性もあってどこか悲しげに聞こえるし、不協和音なんだけど、聴いているうちにグルーブに入っていくような心地よさもあった」

 さらに川村さんは、ミュージシャンにこの音源を託し、楽器や歌声で色を付けた曲を集めてCDにしようと考える。蓮沼執太、湯川潮音、伊藤ゴロー、高木正勝……。国内外のアーティストに楽曲制作を依頼すると、全員が快くうなずいた。

「肉眼では見ることのできない宇宙を見ることができる望遠鏡があることを知り、その神秘に惹かれました。しかも、その世界に音を付けられるなんて、ロマンチックです」

 と、バンド「クラムボン」のmitoさん。サウンドアーティストの澤井妙治(たえじ)さんは、

「男子って、宇宙に憧れたことが一度はありますよね。今回の話はスケールが大きくて、くらっときました。頭の中で単位が崩壊していく感じが、面白くて」

 と、踊る胸の内を明かした。名だたるアーティストを納得させたのは、プロジェクトが醸し出すロマンだった。

 人の体は、数多くの星の死によって放出された元素によってつくられた。50億年後には、ちょうこくしつ座R星と同じように太陽も死にゆくとみられる。太陽の中で作られた物質も、新しい生命の素材となるべく宇宙に飛び出す。死にゆく星の音を「聴く」という体験を通じ、メンバーが伝えたいのはこんな「宇宙の輪廻」だろう。

 チームは5月、クラウドファンディングサイト「A-port」を通じ、活動資金として、目標としていた200万円の調達に成功した。200人以上の賛同を背に、プロジェクトが本格的に動き出した。

AERA  2015年5月25日号