アレッポの中心街の眺め(コラム・フォトギャラリー「東遊西撮記」より http://dot.asahi.com/photos/photogallery/archives/4879/)
アレッポの中心街の眺め(コラム・フォトギャラリー「東遊西撮記」より http://dot.asahi.com/photos/photogallery/archives/4879/

 政府軍、反政府軍、ISが入り乱れて戦うシリアで、世界遺産の古代都市が消失の危機にある。世界はこのまま手をこまねいているしかないのだろうか。

 中東シリアの古代都市アレッポは、「中東随一」とうたわれる「スーク」(市場)で知られる。そこは旅行者にとっては完全な迷路で、気の利いた店を見つけて、また来ようと思っても、なかなかたどり着けない。

 日本ユネスコ協会連盟によれば、アレッポを含め、シリアには六つの世界遺産がある。しかし、そのすべてが今、「危機遺産」に登録されている。すなわち、内戦による破壊や違法な盗掘によって、その顕著な普遍的価値を損なうような重大な危機にさらされているのだ。

 2011年に中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降、シリアは内戦状態が続いている。筆者は06年、戦火に見舞われる前のシリアを訪ねた。1年8カ月かけてインド、イスラム圏を旅する途上で、ヨルダンから入国し、主要都市と世界遺産を巡った。

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