MUJI HOUSE「21世紀、団地のカタチ」住空間事業部 開発担当一級建築士 豊田輝人(38)撮影/伊ケ崎忍
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MUJI HOUSE
「21世紀、団地のカタチ」

住空間事業部 開発担当
一級建築士 豊田輝人(38)
撮影/伊ケ崎忍

 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

【ニッポンの課長フォトギャラリーはこちら】

 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回はMUJI HOUSEの「ニッポンの課長」を紹介する。

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■MUJI HOUSE 住空間事業部 開発担当 一級建築士 豊田輝人(38)

 すべてを壊すのではなく、使えるものは残す。古くなった団地の現状を確認しながら、「この柱は残そう」「多少のキズがあっても、無駄に新しくするのはやめよう」と、一つ一つ丁寧に判断していく。コストを抑える効果もあるが、長い年月を経た団地だからこそ、生かしておきたいところは多い。

 これは、生活雑貨店「無印良品」が、UR都市機構と共同で進める「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」のテーマの一つ。昭和40~60年代に建てられた団地の空室を、若い世代が住みたくなるような部屋に改修する。無印良品の住宅事業を担う「MUJI HOUSE」(東京)の豊田輝人は、このプロジェクトの設計リーダーだ。

「団地は棟によって建築年が異なる場合もあり、状況はさまざま。実際に着工してみないとわからないことが多いので、まめに現場に足を運んでいます」

 プロジェクトの対象は現在、千里青山台団地(大阪)、落合団地(兵庫)、千代が丘団地(愛知)、武里団地(埼玉)、真砂団地(千葉)、高島平団地(東京)など、全国13カ所にもなる。豊田は部下の設計士やアシスタントを率い、これまで19タイプの部屋の設計を手がけてきた。

 東京理科大学の大学院を修了後、組織設計事務所に5年ほど勤務した。住む人が家に合わせるのではなく、住む人の暮らしを主役として、「暮らしの背景をととのえる」というMUJI HOUSEの理念に共感し、2005年に転職した。

「新築と違って、リノベーションはこれからの分野。出てきた課題に対し、すべて100点を目指すと平均的なものになってしまう。どこかは削ってでも、別の部分で120点を取ることで魅力的なものをつくりたい」

 壁を取り払った室内に、やわらかな陽の光がふりそそぐ。(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(ライター・安楽由紀子)

AERA 2015年1月19日号