年1回のイベント「ホームカミングデイ」には、卒業生やその家族がキャンパスに集う/東京都文京区の東大本郷キャンパスの「赤門」前(写真:東京大学提供)
年1回のイベント「ホームカミングデイ」には、卒業生やその家族がキャンパスに集う/東京都文京区の東大本郷キャンパスの「赤門」前(写真:東京大学提供)

 母校に冷ややかだった東大卒業生に、変化の兆しが見えている。大学は卒業生の支援を受けることを戦略の一つと位置づけた。

 二翻(リャンハン)ルール──東京大学卒業生室の島田久弥副室長(52)は、ひそかにそう呼んでいる。

 東大の同窓生が出会っても、共通項が「東大卒」の一つだけなら、「そうですか」で終わり。同じサークル、寮、学科など二つ目の共通項が見つかると、一気に距離が縮まり、同窓意識が生まれる。マージャン用語で言うなら役二つの「二翻」にならないとダメ。

 ほかの大学なら、共通項一つでも同窓意識はありそうだ。早稲田なら「稲門会」、一橋は「如水会」、慶應は「三田会」と、名の知れた同窓会組織がある。会社の先輩が同窓の新入社員の歓迎会を開くなど、社会のあちこちで“つながり”が意識されているが、東大卒にはそうした声がかからない。「東大生は群れてはいけない」と思っているフシがある。だから、同窓会組織も弱かったのだが、2004年の国立大学法人化以降、大学間の競争が激化し、東大も対策に乗り出した。

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