「あくまでも“フラット”な姿勢で、事実としての証言をアーカイブし、そこから何をくみ取るかは視聴者に委ねたい。いま、ネットでは中身も見ないで批判されがち。それは避けたい」

 そう話す両角さんは平和運動に携わったことはない。だが、昨春、集団的自衛権をめぐり「再び戦争が起こるのでは」という声が高まるなか、自分の戦争イメージが曖昧なことに気づいた。

「戦争中、そして戦後、草の根の一人ひとりがどう生きたのか、その声を聞いてみたい」

 つてを頼りにこれまで6人の証言を掲載した。プロの取材者はおらず、両角さん自らカメラを携え、取材にあたっている。証言者たちは淡々と、しかし驚くほど鮮明、かつ具体的に、戦前から敗戦、戦後の日々を語る。草の根の貴重な証言だ。

 証言者の一人、木村禮子(れいこ)さん(86)は小澤さんの中学時代の恩師の元同僚。神奈川・横須賀に生まれ、海軍兵士に囲まれて育った。出征前、兵士たちが「死ぬのは嫌だ」と陰では泣いていたのが忘れられない。兄も戦死した。証言した理由をこう語る。

「若い人たちが『引き揚げって何?』と話しているのを聞き、大変な時代になったと思った」

 運営資金はネットのクラウドファンディングで募集。ジャーナリストの津田大介さんもツイッターで支援を呼びかけた。

AERA 2015年4月13日号より抜粋