雪氷、気象、大気、生物、地質、超高層…南極へ向かうのはこれらの研究者だけではない。観測隊にはさまざまな分野で腕を誇る技術者がいる。観測と基地の生活を支える「設営隊員」だ。調理人や医者、通信士、建設や機械に関わる職人が集う。

 1次隊から社員を派遣しているいすゞ自動車は、雪上車のエンジンなど機械整備を担当。雪上車は大原鉄工所、基地の発電機はヤンマー、電気設備は関電工や日立製作所、環境保全は三機工業、通信設備はKDDIやNECなど多くの企業が支える。

 南極は、プレハブ、インスタントやフリーズドライの食品、防寒装備などの開発に実験舞台を提供してきた。近年は「宇宙のシミュレーション」としても注目される。宇宙飛行士の健康や精神面のケアなどを探るのに地球上では最適の場なのだ。長期の野外遠征で風呂に入れなかったら皮膚細菌はどうなるか、限られたメンバーで太陽が出ない極夜を過ごす越冬でストレスは──。南極観測隊員を被験者にすれば、宇宙ステーションの長期滞在や宇宙飛行にも役立てられるのではとの実験も進む。

 技術が南極観測を支えてきた。その特殊環境を生かせば、技術開発の場としての可能性も計り知れない。

AERA 2015年4月13日号より抜粋