世界の覇権を映す基軸通貨。人民元のシェアは資金決済で2%台。いまはまだ世界5位の通貨だが、英国はその先の世界を見据えて手を打つ(撮影/写真部・堀内慶太郎)
世界の覇権を映す基軸通貨。人民元のシェアは資金決済で2%台。いまはまだ世界5位の通貨だが、英国はその先の世界を見据えて手を打つ(撮影/写真部・堀内慶太郎)

 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、50以上の国・地域が参加表明した。潮目は英国の参加。その裏には、遠大な国家戦略があった。

 ロンドンの金融街シティーは、植民地貿易に一獲千金を託した投資家や商人が開いた街だ。対岸は造船業で栄えたドックランド。今はモダンな再開発ビルが立ち並び、シティーからあふれ出る金融ビジネスの受け皿になっている。ここに「人民元センター」ができるという。

 旗振り役はジョージ・オズボーン財務相。オックスフォード大学から保守党本部に入り、2010年に38歳で財務相になった。「次の次の首相」ともいわれる。3月12日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明し、「アジアとの相互投資によって成長する大きな機会となる」と語った。

 AIIBは鉄道、道路、通信回線などのインフラ建設に資金を融資する。「ユーラシア大陸の西と東を結ぶ現代のシルクロードは地域に飛躍的な発展をもたらす」と財務相は確信し、ロンドンは一方の極になることで繁栄しようというもくろみだ。
 
 13年には北京を訪問し、「ロンドンを人民元ビジネスの中核センターにする」と打ち上げ、ポンド・人民元の直接取引を馬凱(マーカイ)副首相と合意した。経済規模で日本を追い抜いた中国は、人民元を世界のどこでも交換できる「国際通貨」にしようと懸命だ。

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