「身体が動ききる前は、開腹手術の影響は感じなかったのですが、4回転になったら開腹した部分の筋力に微妙なズレがありました。他のジャンプは何とか対応できるけど、4回転ジャンプはそのズレで跳べなくなることに気づいたんです。でもとにかく上海(世界選手権)に間に合わせようと集中しました」

 4回転を取り戻したい焦りもあって、調子を上げていくことだけに集中し、試合の前週には4回転の手応えをつかむ。さらに体力を取り戻そうと、フリーの4分半を通した練習を繰り返した結果、ミスなく演技ができる日もあった。ところが、上海入りしてから調子が下降する。公開練習では、4回転を何度もミスした。明らかに疲労が見て取れた。

 通常なら、コーチが調子を見極め、試合にピークが来るよう練習量を調整する。一人で調整していたため、ただ調子を上げることだけを考えたのが、仕上がりが早すぎた原因だった。

 その経験をしたからこそ、国別ではピークを合わせるため、虎視眈々(たんたん)と作戦を練る。

 技術的には、世界選手権前の練習でミスなく演技できており、出来上がっている自信があるという。唯一の懸念材料があるとすれば、国別が世界王者を狙うタイトル戦ではなく、チームで戦う“祭り”でもある点だ。

「いつもと違う雰囲気の試合のなかで、どこまで自分を集中させられるか」

AERA 2015年4月20日号より抜粋