夏でも海氷は厚さ5~7メートル。南極観測船「しらせ」は体当りして砕氷しながら昭和基地を目指す (c)朝日新聞社 @@写禁
夏でも海氷は厚さ5~7メートル。南極観測船「しらせ」は体当りして砕氷しながら昭和基地を目指す (c)朝日新聞社 @@写禁

 日本の南極観測が始まって来年で60周年。だが近頃は「難局」続きだ。厚い海氷で輸送に苦労し、その影響は観測にも及んでいる。

 今、南極観測隊を一番、悩ませているのは海氷だ。温暖化で北極の海氷は小さくなる一方だが、南極は違う。昨年9月20日、海氷面積は1970年代後半の衛星観測開始以来最大の2012万平方キロを記録した。

 寒冷化? いや、そうとも言い切れない。南極大陸は内陸で最低気温マイナス89 .2度を記録した地球上で最も寒い所だ。極寒では空気は乾燥し雪も少ない。だが暖かく湿った空気が入り込めば降雪が増えることもある。積雪は海氷を厚く、とけにくくもする。温暖化で海氷が広がる場合もあるわけだ。どちらかは、まだわからない。

 海氷が厚く、南極大陸周辺で最もアクセスが困難とされてきた昭和基地は、4代目観測船「しらせ」が就航した2009年頃から、厳しさを増す。大陸岸から海へ広がる「定着氷」は夏でも100キロ沖まで。厚さ5~7メートル、数メートルの積雪もある。しらせは体当たりして砕氷するが、1日で1キロ足らずしか進めない日もあった。

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