岡藤正広さん(65)伊藤忠商事社長おかふじ・まさひろ/東京大学経済学部卒業。伊藤忠入社後は主に繊維畑。非資源ビジネスに注力し、業界3位にまで牽引した(撮影/編集部・鳴澤大)
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岡藤正広さん(65)
伊藤忠商事社長
おかふじ・まさひろ/東京大学経済学部卒業。伊藤忠入社後は主に繊維畑。非資源ビジネスに注力し、業界3位にまで牽引した(撮影/編集部・鳴澤大)

 大学時代に大別される「文系」と「理系」。ビジネスの現場では、それぞれどんな特徴があるのだろうか。伊藤忠商事社長の岡藤正広 さん(65)の目にはこんな風に映るようだ。

*  *  *

──幅広い事業を展開する商社には多彩な人材がいると思います。文系、理系の社員はどう映りますか。

岡藤:文系の場合には、学校での成績はあまり関係ない。人との接点でいろんなビジネス、やっていくでしょ。理系は自分の考え方を追求し、妥協を許さない面がある。欠点は、きちっとしすぎていて、相手に合わせられない人が多いこと。顧客などが最後にちょっとむちゃ言う時があるよな。それを曖昧にできない。「だめですそれは」となる。

 だけど、世の中いうのはなかなかそう理路整然とはいかないよな。結論が想定の通りに出ない場合もある。それが理系にはものすごい気持ちが悪い。文系のほうが割と「甘い」いうかぼんやりしとるから、まあ相手にもうまく合わせられる人が多いわな。

──男女の違いのようにも聞こえます。

岡藤:女性はどちらかというときちっとしていて「理系的」。だからお客さんに対しても、ルールを設けると「こうですよ」と。たとえ文系でもきちっと言う。相手も「しゃあないな」と聞くんですわ。ところが、男が同じことを顧客に言うと、「なんやあいつは」と言われる。

 例えば、繊維担当でブランドビジネスをやっていた時の話。海外のオーナーから「このブランドはこういう作り方で」などいろいろ言われる。でも、「こうすれば商品が売れる」と思えば、メーカーは勝手に作りよるわけ。その時の対処が違う。

 ブランドの担当者が男性だった時は「あかん」とは言うものの、泣きつかれると「ほな今回だけ、次はやめてくださいよ」で終わる。ところが女性担当者の時は「だめです」とはっきり言っていた。相手も「かなわんな」と言いながらも自分が悪いから引き下がる。だから日本ではブランドを管理する担当は女性も多いよ。女性のほうが妥協せずに言うし、お客さんも聞きやすい。男性担当者が妥協せず言うたら、相手からは「なんやあいつは!帰ってくれ!」となる。今までの事例がそうなっとる。

AERA 2015年4月13日号より抜粋