ここで使うのは「スクラッチ」というツール。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボによって開発され、呪文のような文字を打ち込まなくても、視覚的にプログラムを組み立てられる。子ども向けのプログラミング教室でよく使われているのが、これらしい。

 たとえば、「10歩動かす」というブロックと「もし端に着いたら跳ね返る」というブロックを合体させると、画面にいるキャラクターが、歩く→端までくる→反対方向に歩く、という動作をする。“昭和”の子どもを夢中にさせた「電子ブロック」のデジタル版みたいなものか、と考えていると、インストラクターが「一緒にクイズゲームを作ってみましょう」と合図。

 言われた通りにブロックを合体させていくと、あら簡単。二つのキャラクターが画面上でぶつかり、一方が三択クイズを出して、もう一方が答え、合っていればこう言い、みたいなクイズゲームが、10分ちょっとでできてしまった。

●カスタマイズする子

「スマホアプリで億万長者」の夢が再び頭をもたげてきたが、世の中、そう甘くはない。次は自力でブロックを合体させ、三つの簡単なゲームを作る。テキスト通りに組み立てたつもりが、何かのブロックが抜けていたり、合体させる場所が違っていたり。相手は機械だけに、プログラミングのちょっとのミスでも、だんまりを決め込んでピクリとも動きやしない。

 そうやって一つ目のゲームに悪戦苦闘しながら、ふと周りに目をやる。なんと、多くの子たちが、とっくに三つのゲームを作り終えている。しかも、「アイテムを取ったらキャラクターの色が変わる」など、テキストに書いてないカスタマイズをしてる子までいるじゃないの。初心者がほとんどのはずなのに、なに、この違い。そういえば、インストラクターと小学生のこんなやりとりを耳にした。

「これってマインドマップといっしょだね」(生徒)

「え、知ってるの?」(インストラクター)

「うん。『思考の地図』でしょ」(生徒)

 ぎゃー、もうやだ。休み時間もパソコンにかじりついて、夢中でプログラミングに熱中する子どもたちをよそに、こっちは1時間ほどで限界に。付き添いのパパやママに話を聞く。

「自分がSE(システムエンジニア)なので、プログラムが動いたときの達成感を子どもにも知ってもらいたかった」

 と小学生男児のパパ。「ゲームが好きな子なので、作る興味も持ってもらいたくて」

 と小学生女児のママ。

 結局この日、私が5時間かけて完成させたのは、がビーチボールをひたすら追いかけるプログラムのみ。ゲームでも何でもなく、ひたすら追いかけてるだけだけど、まあ、いい。

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