栄光ゼミナールのハノイ校では約100人が数学・算数と英語、理科を学ぶ。今後、ホーチミンなど他都市にも広げていく(写真:栄光ホールディングス提供)
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栄光ゼミナールのハノイ校では約100人が数学・算数と英語、理科を学ぶ。今後、ホーチミンなど他都市にも広げていく(写真:栄光ホールディングス提供)

「日本の教育」がアジアで人気だ。いったい何が、彼らを惹きつけるのか。

 ベネッセホールディングスは06年から中国で、「こどもちゃれんじ」の事業を始めた。会員数は14年10月現在で66万人。事業エリアは、上海など沿岸部の大都市だけでなく、重慶や長沙などの内陸部の都市にも広がっている。「月齢別」できめ細かく設け、乳幼児向けを手厚くしている。

 日本の教材をただ輸出するのではなく、現地のニーズに寄り添う。同社によると、乳幼児向け教育は、中国ではほとんど手つかずの市場。「しまじろう」と一緒に、トイレでのおしっこや、歯磨きなどの生活習慣を学べる教材が保護者からの支持を集め、月齢別の開始翌年には、会員数が一気に9万人も増えた。

 インドでも、日本企業が存在感を増す。学研ホールディングス・グローバル戦略室の井手康輔さんは、インドの学校で空気の重さの実験を終えた後、次々と子どもたちにサインをせがまれた。各地を回る科学実験パフォーマンスでは「日本の科学者来たる」というポスターを至る所に貼った町も。まるでアイドルのコンサートさながらだ。

「日本式」のどこに強さはあるのか。どうやら、ニッポンの「ソフト力」にあるようだ。アニメなどがアジアで存在感を増し、近年は「コンテンツ力」に関心が高まる。日本の教材は独自のキャラクターを使い、さまざまな工夫をしながら長年、教育熱心な家庭を取り込んできた。

 きめ細かい「接客」も強みだ。例えば、02年にベトナムで現地法人を立ち上げた栄光ホールディングスは、13年5月に現地向けの学習塾を開き、丁寧な「少人数指導」を売りに支持を集めている。

 同社によると、ベトナムの一般的な塾では40人近くの子どもが集まって学ぶスタイルが多いというが、栄光は10~20人前後の定員制授業を用意。保護者面談や、塾以外の日も利用できる自習室など、フォローも欠かさない。「現地スタッフに、教育産業=サービス業という意識を持ってもらうのに苦労しました」と、ハノイ校立ち上げに関わった同社の堀内建太さんは話す。

AERA 2015年3月23日号より抜粋