廃炉作業が進むドイツのグライフスバルト原発。作業員が処分に向けて機器の切断を進めていた/2013年6月(撮影/服部尚) (c)朝日新聞社 @@写禁
<br />
廃炉作業が進むドイツのグライフスバルト原発。作業員が処分に向けて機器の切断を進めていた/2013年6月(撮影/服部尚) (c)朝日新聞社 @@写禁

 7年ぶりに来日したドイツのメルケル首相は、東京電力福島第一原発の事故映像が、「今も目に焼きついている」。だからこそ、もがきながらも脱原発の道を歩む。

 ドイツの左派系日刊紙「ターゲスツァイトゥング」のベッター経済・環境部長は2月9日、ベルリンで日本記者クラブ取材団と会見。日本の原発が再稼働に向けて進んでいることについての質問に、こう答えた。

「4年間も原発なしでやってこられたのに、なぜその間にほかの電源をもっと推進できなかったのだろうか」

 ドイツはもともと脱原発路線だったが、東京電力福島第一原発事故を受けて、2022年に原発ゼロにすると、それまでよりも早く原発をなくす路線にかじを切った。ベッターさんによれば、ドイツ国民にとって福島第一原発事故はチェルノブイリ原発事故と同じように、原発の怖さや恐ろしさを示すシンボルになっている。そんな事故を起こした国がふたたび原発を使おうとしていることは、とても理解できないのだという。

 振り返れば、ドイツの脱原発をめぐる歴史は長い。00年に「社会民主党」と「緑の党」による連立政権は、原発の運転期間を原則32年とし、20年ごろまでに段階的に廃止すると決定した。

 しかし、09年に発足した第2次メルケル政権は、脱原発を維持しつつも、平均で12年間運転を延長する法改正を成立させ、全原子炉の稼働停止期限を2036年まで延長することにして、脱原発の速度を緩めた。

 ところが、福島第一原発事故で事態は一変した。連邦政府は、17基の原子炉のうち、1980年以前に運転を開始した7基と、故障で停止中だった1基の再稼働を認めず、残る9基も22年末までに順次止めることを決めた。

 はしごを外された格好の電力会社は、猛然と反発した。稼働延長に伴って電力会社から核燃料税を徴収する制度は維持されることにもなったからだ。電力会社は核燃料税の取り消しなどを求め、連邦政府を相次いで提訴した。

 とはいえ、ドイツでは脱原発をやめるという選択肢は、もはや考えられないだろう。その点は電力会社側も認める。むしろ、脱原発の先にある放射性廃棄物の処理や廃炉の問題が、深刻に語られ始めている。

AERA 2015年3月23日号より抜粋