最終報告書を公表した記者会見の最後に、改めて頭を下げる群馬大学医学部附属病院の幹部ら/3月3日、前橋市で (c)朝日新聞社 @@写禁
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最終報告書を公表した記者会見の最後に、改めて頭を下げる群馬大学医学部附属病院の幹部ら/3月3日、前橋市で (c)朝日新聞社 @@写禁

 群馬大学医学部附属病院での腹腔鏡による肝臓切除手術後、8人の患者が死亡した。3月3日に公表された「最終報告書」は、8人の患者全員の診療での病院側の過失を認めた。

 腹部を大きく切る必要がなく、回復が早いことなどから近年広まりつつある腹腔鏡手術。しかし医師によって技術の格差があるようだ。医療ジャーナリストの田辺功さんはこう話す。

* * *
 負担軽減が目的の腹腔鏡手術での死亡は患者への「裏切り」です。技術レベルの問題か、腹腔鏡の範囲を超えた重症か、その両方だった可能性もあります。

 医療での予期せぬ死亡は、今回に限らず、他の手術、内科の診断遅れ、不適切な投薬など、全国の病院で起こりえます。医師の技術は「神の手」から「死の手」までさまざま。上手な医師は1~2割、避けたい医師が3~4割でしょうか。

 ところが、日本の医療制度には「質」の評価はなく、医師の技術は同じという建前です。病気を治さなくても、失敗しても、基本的には責任を問われない仕組みですから、医師は技術を磨くことに熱心とはいえません。今回は病院内の規定違反や病院の評判を守るための、例外的な対応です。

 根本解決策は、「質」の評価を取り入れた、患者に見える医療制度の導入です。それまでは、患者は自力で医師を選ばないといけません。「かかりつけ医」をもつ、セカンドオピニオンや患者団体の活用、病院職員や患者から評判を聞くなど、あの手この手が必要です。

AERA  2015年3月23日号より抜粋