洗練されたロゴデザイン。細部にまで妥協を許さないものつくりの姿勢。何より、行列してでも飲みたいと思わせるメディア戦略。ブルーボトルのソーシャルメディアを駆使したブランディングは、ジョブズを彷彿させる (c)朝日新聞社 @@写禁
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洗練されたロゴデザイン。細部にまで妥協を許さないものつくりの姿勢。何より、行列してでも飲みたいと思わせるメディア戦略。ブルーボトルのソーシャルメディアを駆使したブランディングは、ジョブズを彷彿させる (c)朝日新聞社 @@写禁

 1杯ずつのドリップにこだわったコーヒーショップ・ブルーボトルが日本に上陸。スタバ、タリーズとは異なる、コーヒー「第3の波」が日本に押し寄せている。

 日本は世界有数のコーヒー消費国。1990年代半ばに、スターバックスやタリーズに牽引されたカフェブームが到来。今やおいしいコンビニコーヒーが100円で飲める激戦国だ。その日本でブルーボトルコーヒーは成功するのだろうか。
 
 2012年、ブルーボトルコーヒーに先駆けて日本進出を果たしたノルウェー・オスロ発の「FUGLEN(フグレン)」。現在は渋谷店のマネジャーとして活躍する小島賢治(37)は、ニューヨーク・タイムズで「世界最高品質のコーヒーは飛行機に乗ってでも試しに行く価値がある」とまで称賛された味を、本国オスロにまで行って学んだ。オープンして3年。東京のコーヒーカルチャーの裾野は確実に広がりつつある実感がある。

「高品質で、鮮度のいい豆は、(サードウェーブの特徴である)果実の風味が残る『浅煎り』で焙煎し、抽出してこそおいしい。最初は酸っぱいとしか感じなかった日本人の味覚が、少しずつ芳醇な味わいに慣れてきたのだと思います。一度、その味を覚えてしまうと、後戻りすることができなくなってしまう」

 サードウェーブを単なる流行で終わらせるのではなく、本当の意味で根付かせたいと小島は考えている。

 街では今、カウンターを主体としたバースタイルのコーヒーショップが増えている。理想のコーヒーを目指して参入する若い世代が後を絶たない。それは、日本でのサードウェーブの胎動にも見える。

 渋谷・道玄坂で「ABOUTLIFE COFFEE BREWERS」というわずか5坪のコーヒーショップを営む坂尾篤史(31)は、バックパッカー時代、米国ではなく、今やスペシャルティコーヒーの聖地とも呼ばれるオーストラリア・メルボルンでコーヒーに出合い開眼した。

 東京の老舗カフェでサービスと経営を学び、コーヒーはほぼ独学。3年前、働いて貯めた700万円で独立した。経営が軌道に乗った今、目指すのは毎日、足を運ぶことができるコーヒーショップ。それに見合った味と価格を意識している。

「この仕事は、豆の焙煎やコーヒーの抽出など職人仕事に徹しながら、カウンター越しにお客さんともコミュニケーションができる。一杯のコーヒーを通じて、自分以外のお客さまの人生に関わることができる幸せは、正直、金銭には換え難いやりがいです」

 ブルーボトルコーヒーの日本進出によって百花繚乱。さまざまなスタイルのコーヒーショップが国土の狭い島国にひしめき合い、しのぎを削る時代となった。

AERA 2015年3月9日号より抜粋