2014年に代々木公園(東京都渋谷区)で行われた「東京レインボープライド」。差別をなくし、性の多様性をアピールするパレードだ。渋谷区の後援があり、長谷部区議らも参加。渋谷区長もメッセージを寄せた (c)朝日新聞社 @@写禁
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2014年に代々木公園(東京都渋谷区)で行われた「東京レインボープライド」。差別をなくし、性の多様性をアピールするパレードだ。渋谷区の後援があり、長谷部区議らも参加。渋谷区長もメッセージを寄せた (c)朝日新聞社 @@写禁

 日本では法的に認められていない同性婚。渋谷区は独自に認める条例案を出すという。難しい問題に、なぜ風穴があいたのか。

 LGBT(性的少数者)に画期的な条例ができるという。東京都渋谷区は同性カップルから申請があれば「結婚に相当する関係」と認める条例案を、3月の議会に提出する。承認されれば、4月から施行される。公の機関としては初だ。

 海外では20近くの国で同性婚が法的に認められているが、日本では認められていない。医療現場での面会、不動産の賃貸契約・購入、保険、相続、税金などで不便が生じている。渋谷区のパートナーシップ証明は、区民や区内の事業者に向け、証明書を持つ同性カップルを夫婦と同等に扱うよう求めるものだ。

 画期的な条例成立に向けた動きには立役者がいる。渋谷区議の長谷部健さん(42)だ。博報堂を経て渋谷区議になり、現在3期目。日本各地で清掃活動を行うNPO法人green birdの創設者でもある。

 長谷部さんはLGBTの当事者ではない。これまでこの問題に対しては、当事者が自分たちの問題として声を上げるケースが多かった。その場合、人権問題というアプローチになりがちだったが、長谷部さんは、それではなかなか行政は動かないと感じていたという。

 長谷部さんが取ったのは街づくりの一環としてのアプローチだ。ニューヨークやパリ、ロンドンなどでは、障がい者やLGBTの人が当たり前に暮らしている。多様性は成熟した都市の条件だという確信があった。

 渋谷で生まれ育った長谷部さんは、最近こう感じていた。

「かつては竹の子族がいて、DCブランドブームがあって、渋谷系と言われる音楽があった。いつからか渋谷発のものが減り、街の活力が落ちてきている危機感、さびしさがありました」

 東京五輪に向け、渋谷からクールなうねりを作り出し、リードしていこう。2012年6月の区議会で、ダイバーシティーの一つとして、LGBTの支援、パートナー証明書の発行を提案。周囲の区議からも賛同を得て、区を動かしていったという。

AERA 2015年3月2日号より抜粋