4年前に特注した黒田のユニフォームを持つ横山さん。アンテナショップに入荷した「黒田グッズ」は、発売3時間半ほどでほぼ完売(撮影/編集部・内堀康一)
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4年前に特注した黒田のユニフォームを持つ横山さん。アンテナショップに入荷した「黒田グッズ」は、発売3時間半ほどでほぼ完売(撮影/編集部・内堀康一)

 7年前、夢を抱いて米国に渡った黒田博樹投手(40)が、名門ヤンキースから古巣の広島カープに戻ってくる。それも、メジャーで5年連続2ケタ勝利を挙げた現役バリバリのまま、20億円とも報じられた巨額のオファーを蹴ってまで──。

 こんな男気あふれる決断に、心を揺さぶられたのは記者だけではないはずだ。同志を探して向かったのは、カープファンが集う東京・神田のお好み焼き店Big‐Pigである。

 赤いユニホームに身を包んだ30~40代のサラリーマン4人組に恐る恐る「あのー、皆さまは黒田男子ですか…」と問うと、広島出身の男性が、「テレビで復帰を知った瞬間に号泣した」と明かしてくれた。全員が、黒田に憧れる「黒田男子」。いつのまにか記者の前にもビールが運ばれ、男気談議は続く。

「20億を蹴って自分を育ててくれたチームに恩返しをしようって。毎年毎年、期待しても、本当に戻ってくるとは思わなかった。ファンの期待に本当に応えちゃうのが、すごい。子どもにも伝えたい話です」

 探せば、いたるところに黒田男子。このお好み焼き店の広報、竹内宏和さん(42)もその一人で、

「今回の件で新たに好きになった人は多いと思います。知り合いのSNSとかを見ていると、『阪神ファンだけど感動した』みたいな人が、結構いますよ」

 東京・銀座の広島ブランドショップTAUで働く横山弘朗さん(26)は昨年末、友人からのメールで黒田復帰のニュースを知り、雷に打たれた。

「2日遅れのクリスマスプレゼントを、ドーンと枕元に置かれた感じでした」

昨年の流行語にもなった女性ファンをなぜかライバル視する冒頭のサラリーマンたちは、「黒田に乾杯」と飲み交わし、こう気勢を上げた。

「黒田の復帰に震えない人は、男としてどうかと思う。俺たち『黒田男子』は、カープ女子に負けません!」

AERA 2015年2月23日号より抜粋