震災後、増加した「自転車ツーキニスト」。事故のリスクを解消し、自転車と車が共存するためには、両者の意識改革が必要だ(撮影/小暮誠)
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震災後、増加した「自転車ツーキニスト」。事故のリスクを解消し、自転車と車が共存するためには、両者の意識改革が必要だ(撮影/小暮誠)

 エコで健康的でおしゃれ。自転車通勤のイメージは、さしずめそんなところだろうか。だが、自転車が絡む事故で毎年500人前後が命を落としているという現実もある。

 世界的な自転車ブームや、4年前の東日本大震災で経験した「帰宅難民」への備えから、自転車で会社に通う人は増えた。NPO法人自転車活用推進研究会の小林成基(しげき)理事長が2010年11月~13年1月にかけて、朝の通勤時間帯に東京・杉並区の幹線道路で行った定点観測では、ピーク時で4倍強の増加が見られたという。

 健康にも、環境にも良く、子どももお年寄りもみんなが乗れる自転車は、究極のエコカーだが、リスクと無縁ではない。警察庁の統計では、自転車が絡む事故は過去10年減少傾向にあるものの、毎年500人前後が命を落としている。自転車側が「加害者」となる事故の割合は減らず、高額の賠償金を請求されるケースも目立つ。

「事故は死に直結する。自転車をバイクだと思いましょうよ。そう思って乗れば、一時停止や信号を守るし、逆走もしないでしょ? 雨の日に傘を差す人もいなくなる」

 小林理事長は講演で繰り返す。どちらかというと歩行者の仲間と思ってしまいがちな自転車だが、道路交通法上は「軽車両」。れっきとした「車」なのだ。

「自転車ツーキニスト」として複数の著書がある会社員、疋田智さんは言う。

「車道を走り、車に存在をアピールすることが一番大事。夜にライトをつけるのは当然として、私はヘルメットと自転車の後部にLEDを付けて走っています。ヘルメットも大事。車は自転車を遅いものと認識しがちですが、ヘルメットを被ることによって『スピードが出る乗り物です』とアピールもできるんです」

AERA 2015年2月16日号より抜粋