株式会社おかんが昨年3月に開始した「法人向けぷち社食サービス」のお惣菜(撮影/編集部・高橋有紀)
<br />
株式会社おかんが昨年3月に開始した「法人向けぷち社食サービス」のお惣菜(撮影/編集部・高橋有紀)

 こたつに、リビング、お惣菜がいっぱいの冷蔵庫…。まるで実家を思わせるような居心地のよさ。“愛社員”精神あふれる職場が、若者たちをひきつける。

 スマホアプリを開発するITベンチャーのエウレカ(東京都渋谷区)。従業員の平均年齢は27歳。60人もの若者たちが無言でディスプレーに向かうオフィスの冷蔵庫には、やけに家庭的なお惣菜が並んでいる。かぼちゃ煮、切り干し大根、厚揚げ、玄米ご飯。まるで田舎の母親が作ったかのようなメニュー。

 社員はいつでも食べたいときに、冷蔵庫の脇にある代金箱にお金を入れて、好きなものを選ぶ。封をあけて容器に移し、レンジで温めればすぐに食べられる。メニューはほとんどが100円か200円。

「添加物を使っていないので安心だしヘルシー。それになにより、おいしいんです。一番人気は煮込みハンバーグ」

 愛用している副社長の西川順さん(39)が教えてくれたこのサービスは、その名も「オフィスおかん」。株式会社おかんが昨年3月に開始した「法人向けぷち社食サービス」だ。オフィスにお菓子の入った専用ボックスが据え置かれている「オフィスグリコ」のお惣菜版と考えるとわかりやすい。

 エウレカでは西川さんが、社員の食生活を改善したいと昨年9月から導入を始めた。お惣菜の入った冷蔵庫の横には、にんじんやトマト、ラディッシュなどの生野菜が小分けにされ、ディップと合わせてすぐに食べられるようにもなっている。食事にこだわるのは、長くネット業界で働いてきた彼女自身の経験がベースにある。

「20代の頃は忙しくて、夕食がポテトチップスにエナジードリンクなんていうこともありました。病気というわけではないけど、常にだるさを感じていた。食事に気をつけるようになったら体調が見違えるように変わりました」

 社員に不健康な食生活をやめさせたいという西川さん。以前のオフィスにはキッチンがあり、社員数もまだ少なかったため、西川さん自らが週に1度は料理をしてみんなにふるまっていた。まさにこの会社の「おかん」的存在なのだ。

AERA 2015年2月9日号より抜粋