Bean to Bar専門店Minimal店内では、選別、焙煎、磨砕、調合、成形の全工程を見学できる(撮影/写真部・堀内慶太郎)
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Bean to Bar専門店
Minimal

店内では、選別、焙煎、磨砕、調合、成形の全工程を見学できる(撮影/写真部・堀内慶太郎)
板チョコを割る際のサイズが違うのもこだわりの一つ(撮影/写真部・堀内慶太郎)
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板チョコを割る際のサイズが違うのもこだわりの一つ(撮影/写真部・堀内慶太郎)

 カカオ豆の焙煎から、チョコレートを製造するところまでを、ひとつの工房で行う「Bean to Bar(ビーントゥバー)」が、日本にも進出している。そこは、チョコレートの魅力を改めて教えてくれる場だ。

 目の前に並ぶ四つの小さなチョコレート。かじった瞬間、ベリーのようなフルーティーな味わいが口の中に広がったり、ミントのような香りが舌の奥から上がってきて、鼻腔(びくう)をくすぐられたり──。

 その豊かな香りと味わいは、正真正銘、自然の恵みが生み出したものだ。チョコレートが「カカオ豆」という植物から生まれた食べ物であることに、改めて気づかされた。

 こんなチョコレートの新たな魅力を教えてくれたのは、「ミニマル」代表の山下貴嗣(たかつぐ)さん(30)とディレクターの朝日将人(まさと)さん(39)。2人は昨年12月、業界の新しい潮流として注目される「Bean to Bar」の工房兼ショップを立ち上げた。

 Bean to Barとは、カカオ豆の産地や品種にこだわり、豆の焙煎から板チョコの製造までを一貫して行うこと。手間ひまかけて作るため、多くが小さな工房での少量生産だ。2008年頃からアメリカで、カカオ豆を個人で調達し、コーヒー用の小さな焙煎機などを使いガレージなどで手作りする人たちが現れたのが始まりとされる。

「僕もBean to Barのチョコレートを初めて食べたときは衝撃でした。感動が忘れられず、世界中を回って生産から製菓まで研究。一念発起して、この世界を教えてくれた朝日と一緒に店を作ったんです」(山下さん)

 ミニマルのチョコレートの原料はカカオ豆と砂糖のみ。ミルクやバターを使わないのは、カカオ豆の風味や香りをストレートに味わってほしいからだ。

「Bean to Barの魅力はお客さまとコミュニケーションしながらカカオの奥深さを伝えられること。ワインやコーヒーのように産地や品種の違いを味わう文化を、チョコレートの世界でも作りたいんです」(山下さん)

AERA 2015年2月9日号より抜粋