部分的に人の能力を超える高性能のロボットがあふれる社会。便利である一方、危機感を募らせる声もある。SF作家のダニエル・スアレース氏は、ロボットが人の脅威になる可能性についてこう話す。

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 テスラ・モーターズのイーロン・マスクCEOや宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士らが、人工知能(AI)の脅威について発言を繰り広げている。巨額の資金がAI研究に注ぎ込まれている現在、人間の能力を超える高度なAI開発には注意が必要だという見方は正しい。

 だが、AIはそれほど高度なものでなくても、人間社会に十分な危険をもたらすことに目を向けるべきだ。大量のデータがリアルタイムで収集できさえすれば、もっと単純なアルゴリズムを手にした少数の人間が、多くの人に対して強大な権力を振るうことが可能になる。

 それは、核心となる敵を選別し、クレジット記録や公共記録をデータ操作して彼らの経済的な力を弱体化させ、偽のアカウントを利用するなどしてソーシャルネットワーク上の評価をおとしめるといった方法で行われるだろう。

 また、物理的に彼らを消し去ろうとするならば、比較的単純な自動ロボット兵器を大量に動員し、延々と攻撃し続ければいい。

 つまり、権力に飢えた人間が敵を倒そうとするならば、低レベルのAIで十分なのだ。だからこそ、いまのうちにAIを制御する策を講じることが大切なのだ。

AERA  2015年1月26日号より抜粋