異物混入に関する会見で頭を下げる日本マクドナルドホールディングスの青木岳彦上席執行役員(右)ら=7日午後3時32分、東京都新宿区西新宿 (c)朝日新聞社 @@写禁 
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異物混入に関する会見で頭を下げる日本マクドナルドホールディングスの青木岳彦上席執行役員(右)ら=7日午後3時32分、東京都新宿区西新宿 (c)朝日新聞社 @@写禁

 ここのところ、マクドナルドなどで多発している食品への異物混入事件。背景には何があるのだろうか。

 元マクドナルド店長で、『35歳になったらマクドナルドでバイトしろ!』の共著がある青木尚士(たかし)さん(48)が問題とするのは、急速な店舗のFC(フランチャイズ)化だ。

 マクドナルドは、収益性を重視し、本社のコスト負担の低いFC化を進めてきた。2007年に約30%だったFC率は13年には70%近くにまで高まった。FC店は基本的に各店舗の「雇われ店長」が仕切る。直営とは違い本社の指示も行き届きにくい。

 青木さんは、日本マクドナルドのトップであるサラ・カサノバ氏(49)が進める「家族連れや女性客を取り込む戦略」も現場に負担をかけているという。メニューの種類が増え、おまけつきハッピーセットも充実。店員の作業が増えているため、異物混入などのミスのチェックがおろそかになるのかもしれないと指摘する。

 異物混入が相次ぐのはマクドナルドだけではない。各地で食品への異物混入が発覚している。だが、異物混入の場合、必ずしも企業側に責任があると言い切れないケースもある。

 昨年の夏、ツイッターに1枚の写真が投稿された。食べかけのフライドポテトの前に、黒光りする物体が転がっている。傍らの文章にはこうある。

「ポテトに油で揚がってる亀虫入ってたんだけど」

 写真だけでは、投稿の内容が真実であるかどうかの判別はできないが、「まじか。ショックでかい」「絶対食べられない」と、次々に反響が寄せられた。さらに別の動画投稿サイトにも画像が転載され、「亀虫の混入」は“既成事実”となった。このように、異物混入の経路や原因がはっきりしない場合でも、ネットで騒がれれば、イメージが出来上がってしまうことが多い。

 消費者意識が高まり、スマホで写真や動画を気軽に発信できる。このような事態に、企業はどう向き合えばいいのか。

「新聞などで取り上げられなくても、ネットの掲示板やSNSでは大騒ぎになっているという企業のトラブルは意外に多い」

 そう指摘するのは、企業向けに、ネット上の風評被害対策やホームページ監視などを行うイー・ガーディアン(東京都港区)の広報、大島一恵さんだ。同社が勧める対策は、ネットやSNS上の投稿をチェックする「ソーシャルリスクモニタリング」と、連絡体制の整備だ。

「『炎上仕掛人』と呼ばれる人たちがいます。お客様相談室に電話をして、『こんなひどい対応をされた』と、掲示板やツイッターに実況中継する。1次対応を誤ると大炎上につながる。適切な初動対応が大事です」

「異物混入の騒動に紛れ込む、悪意ある第三者の存在こそ、気をつけなければいけない」とは、食品の安全に詳しい消費者問題研究所の垣田達哉さん。ただ、ここまで異物混入が相次ぐことについて、まずは企業の姿勢に注文をつける。

「異物混入の中には原因不明なケースもあるが、企業は常にその一つ一つに向き合い、消費者の信頼回復につなげてほしい」

AERA 2015年1月26日号より抜粋