マズイ、正月前に比べて体重が増えている…そんな思いを抱いた人は少なくないのでは。しかし、食事制限にばかり頼ったダイエットはNGらしい。専門家にその理由や、正月太り解消法を聞いた。

『女医が教える マジカルエクササイズ』『いきいきシニアの「大人のラジオ体操」』など多くの著書がある「Dr.KAKUKOスポーツクリニック」の中村格子院長を訪ねた。

「先生、増えた体重2~3キロをすぐに戻したいんですが」と切り出すと、「それが危険な考え方なんです」いきなりダメ出し。一体、どういうことなのか。

「そもそも正月太りとは、非活動で食べすぎということ。お正月で増えた体重を単純に食事制限で減らそうとすると、筋肉まで減ってしまいます」

 人の筋肉は30歳ごろから年齢を重ねるごとに再生しにくくなり、活動しないとどんどん減少していく。中村さんは言う。

「(筋肉低下が身体機能低下に影響する)サルコペニアという症状があります。だれでも20代ごろから、非活動だと筋肉は年に0.5%程度落ちてくるんです。成長ホルモンが減少してくれば筋肉をつくれず、筋肉を再生しにくくなります。60歳を超えると年に1%減る。単純計算すると、同じ体重でも20歳から60歳まで40年で20%くらいは筋肉が減ることになります」

 体重に変化がなくても、減った筋肉のぶん脂肪が増えているというわけだ。

『痩せる!筋トレ』など多くの著書があるスポーツトレーナーの坂詰真二さんも、「筋肉が落ちることは最大の老化」と言い、できるだけ体を動かすことを勧める。

「男女ともに50代になると加速度的に筋力が下がっていきます。筋力が低くなると体を動かさなくなる。だから筋力が低下する負のスパイラルに陥る。そこで、帰り道は1駅分、あるいはバス停三つ、四つ分を早歩きする、できるだけ階段を使うなどしたいですね」

 もっとも正月太り解消くらいなら、食事の糖や脂肪、酒類を制限したうえで「週2回の筋トレ」も効果的と坂詰さん。筋トレはエネルギーを使うというよりも、筋肉量を取り戻して、落ちた代謝を回復するために一番効率がいい方法という。

 勧めるのは、筋量の多い足や太もも、お尻やふくらはぎなど下半身に効果があるスクワット。30代女性なら10回を1日3セット。男性なら足を前後に開いたスクワットで左右10回ずつ1日3セットをメドに行ってみよう。

 ただし、冬はこうした運動をする前にいくつか注意点がある。

「筋肉は寒いと緊張し、切れやすい。ですから夏より入念に体を温めることが大切です。筋トレなら体が温まっている午後のほうが向いています。トレーニングをする部屋も温めておくといいでしょう」(坂詰さん)

AERA 2015年1月26日号より抜粋