コヂカラ・ニッポン代表 川島高之(50)2012年にNPO法人「コヂカラ・ニッポン」を立ち上げる。イクメン支援のファザーリング・ジャパンの理事も務める。親たちへのメッセージは「PTAや町内会で働くと、利害調整のスキルを学べる」(撮影/写真部・加藤夏子)
コヂカラ・ニッポン代表 川島高之(50)
2012年にNPO法人「コヂカラ・ニッポン」を立ち上げる。イクメン支援のファザーリング・ジャパンの理事も務める。親たちへのメッセージは「PTAや町内会で働くと、利害調整のスキルを学べる」(撮影/写真部・加藤夏子)

 中学校などで行われる、企業での「職場体験」。学校行事のひとつだが、本気で取り組めば双方の利益になる。

 三井物産のグループ企業の社長を務める川島高之さん(50)は、2012年に「コヂカラ・ニッポン」というNPOを立ち上げた。主な活動は、「筋書きのない子どもの社会実習」だ。

 高校生の息子がいる川島さんは、中学校のPTA会長だったとき、相談を持ちかけられた。 総合学習での出来事だ。日本の食料自給率が低いため、アップさせようとコメを作った。収穫したコメでハンバーガーを作って売った。そこで、ある児童が疑問を投げかけたという。

「地域で売っただけで、日本の食料自給率って上がるのかな。日本中で売ってこそ、意味があるんじゃない?」

 川島さんはひらめいた。NPOの活動として、「洋菓子のヒロタ」に、小学6年生との共働によるコメを使った商品開発を持ちかけたのだ。そこから限りなく本気の、新商品開発が始まる。

「仕事だから、プレゼンテーションもしっかりやってもらいます」(川島さん)

 子どもたちが「米粉の量を増やしたい」と提案すれば、ヒロタ側は「シュー生地の強度が足りなくなる」と突き返す。子どもたちの理想と、製造コストとの折り合いをつけるため、お互い何度も話し合った。

 5カ月後、コメを原材料に使ったシューアイスが完成。ヒロタにとって、創業以来の大ヒット商品になった。

「既成概念に縛られない子どものアイデアを生かせば、社会は活性化する。子どもの生き抜く力も伸びるはず」と川島さん。

AERA 2014年12月29日―2015年1月5日合併号より抜粋